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看護・医療しゃべり場

看護・医療しゃべり場②【教育担当ナースの座談会】

投稿日:2013.03.28

「育てる」ことが「学び」につながる。ともに勉強していく姿勢で新人に関わっていきたい。

働きやすい職場作りは誰もが望むもの。とくに、毎年多くの新人看護師が入ってくる春の季節は、職場のマネジメントにも最も神経を使う時期。
多くの病院にとって、新人をどのように教育していくかは、より良い職場作りのための大切な要素となる。
今回は、キャリア豊富な教育担当の看護師3名に集まっていただき、新人教育の方法論についてそれぞれの意見を伺った。

ご参加いただいた看護師(左から)

1. 輿石光希さん/医療看護コンサルタント・看護師
都内の 大学病院、市立病院、医療法人にて看護師として従事し、 副看護部長や師長などの管理職を歴任。 医療・看護コンサルタントとして昨年6月に独立。

2. 深沢久美子さん/JMA海老名総合病院 JMA海老名総合病院看護部・看護主任(教育担当)。
新人教育だけでなく看護部の教育担当として活躍中。 看護部の院内研修や実習の企画・実施も担当。
3. 肥塚直美さん/JMA東埼玉総合病院 JMA東埼玉総合病院看護部・看護主任。
教育委員会の メンバーとして新人支援看護師を務め、新人教育担当を 専任で担当。
各科横断で新人教育にあたっている。

「怒る」のではなく「叱る」ことが時代の流れ?

――病院でのマネジメントを考える上で、新人スタッフ教育の重要性は言うまでもありません。 皆さんが新人教育について心がけていることは何ですか?

輿石 今の新人は、どうしてもコミュニケーション下手というか、患者さんとのコミュニケーショ ンは看護の基本ですが、それがなかなかうまくない。
すごく不得意なように感じます。だから、 コミュニケーションスキルは積極的に教える場を作っていますね。
以前は教育方法も従来の踏襲で、どちらかとい うと厳しく接して行う形が多くありました。私たちの頃は、毎日、涙、涙で。それに負けない ように頑張ったものですよ。
それが 10年前あたりからでしょうか。「ほめて育てる」、「その人に 合った教育をする」ということが看護協会から も言われはじめたんですね。
いわば、インフォームドコンセントをスタッフに対しても行なう必要性が出てきたといいますか。

深沢 確かに、私たちが新人だった時代は、ほめてもらうよりは駄目出しが多かった。
そうして学んできましたね。
いまは、叱ってもいいけど、怒ってはダメ。感情的に強く言うと、ポキっ折れちゃう。もちろん、時代が違いますから仕方ありませんが。

肥塚 言い方、というのは大事ですね。頭ごなしに言うのではなくて、なぜそうなったのか、なぜそうしたのかを聞いていくことで分からせていかないと駄目。
いまは病院全体の教育方針もそうしたスタンスに変わりつつありますね。

輿石 プリセプターの立場としては、新人に対 して「分かっていない」という良い意味での先入観をもって指導することが必要かもしれません。
そして「これはどう?」「わかってる?」と常に聞いてあげる。
「当然分かっているはず」と いうスタンスはプレッシャーにつながり、本人 も聞きたいことが聞けなくなります。「新人なんだから分からないのは当たり前」で、「分かってない」という前提で教えてあげたほうが本人も楽。
そして早い時期にマンツーマンの機会を作っ て、徹底的に教えてあげる方法もいいかもしれません。

病院全体で新人を育てる風土作りが大切

――新人のナースに対する指導の部分で、皆さんは実際に現場でどのような新人指導をしてこられたのでしょうか。先輩から、新人に心を開 かせるテクニックといったものはありますか?

肥塚 普段から、問題を一人で抱え込まないように、ということを考えて指導にあたっていますね。
看護師は真面目な人が多いので、何か問題があった時に一人で抱え込んでしまうケース も多い。相談しやすい雰囲気や環境を作ること。
「病院全体で新人を育てる」ということがスローガンになってますから、特別なテクニックというよりは、普段から風通しの良い環境を作っていくことに主眼を置いています。

輿石 私は仕事とプライベートは別にしたいタ イプでしたので、あまり好きではなかったけれど、新人を連れて飲みに行ったり、家で鍋パーティーをしたり、積極的にコミュニケーション を図ることを心がけているスタッフはいましたね。対話の機会をできるだけ作るという工夫は必要でしょう。
また、新人に自信をつけてもらうには、技術的なスキルを上げることが早道ということがあります。
採血や点滴がうまくできると自信になる。 モチベーションの高まっているときに先輩やプ リセプターからきついこと言われても、負けないぞという気持ちになって心は折れませんから。

――そうした技術的な部分で壁に当たりそうな 新人にはどのように指導を?
輿石 それはもう、腕を貸すことですよ(笑)。
採血も練習キットなんかで練習していたんではダメ。そんなのは最初の基礎的な部分だけです。 あとは、先輩が自ら腕を貸さなきゃ。
そうやっ て新人は育てるんですよ。

肥塚 入りにくそうな人はできるだけ避けて (笑)。
最初から失敗体験をしてしまわないよう に、採血も針が入りやすい人を選んで練習台になってもらいます。
医師の指示のもとでは看護師でも可能ですから、たとえばインフルエンザ注射も病院の職員が行うときには新人にやってもらうとか。そうやってみんなで新人に機会を 与えようとはしていますね。

深沢 私たちはそうやって先輩の腕を借りてやってきたわけですから。暗黙の了解というか、 指導を引き継いでいきますね。貸さないわけに はいかない(笑)

改善していくための問題意識 を常にもってほしい

――新人の指導法で工夫をしている点について 教えてください。

深沢 新人には、入職してすぐにグループワークを経験してもらいます。
1つのテーブルに7〜8名でグループを作り、他職種と意見交換ができる場を設けて、チーム医療を念頭においたミニカンファレンスを実施します。
テーマは各 グループで自由に決めながら、話し合ったことを模造紙に描き発表します。
自分の考えを言葉で表現しながら、お互いの意見や考えを尊重していくトレーニングの場にしていますね。

輿石 以前の病院では、学習ハンドブックなどの教育ツールを作って新人全員にもたせました。
新人へのコメントをプリセプターに記入してもらい、病棟の看護師全員が目を通し、内容を把握することを義務付けました。
それまで、新人 に対する指導の良し悪しや成長の度合いが図りにくかったのが、ツールを用いることで可視化できて、問題点がより明確になりましたね。
新人たちも表紙をデコるなど楽しく活用してくれていましたよ。
また、私が着任した際に、ある病院では「新人連絡ノート」を作って情報共有を図っていたのですが、新人に対する単なる「ダメ出し」の記述になってしまって、まったく建設的なものに なっていなかった例がありました。
せっかく情報共有の仕組みがあっても、そこから何を生んでいくかが大事で、それはプリセプター自身が どう問題提起をしていくかがカギ。
プリセプターには、新人スタッフのより良い指導に結び付けていくために、どう現状を改善していくかとい う問題意識を常にもっておいてほしいですね。

肥塚 やっぱり私も新人を教えていて分かるんですが、人を教えることで自分が逆に教わっていることって本当に多いんですよね。
一緒に勉強する、という姿勢で関わりたいと私も思っていますし、新人の指導でありながら、それって実は自分の学びの場でもあるんですね。
そうしたスタンスを意識していくことで、お互いにいい関係になれると思うんです。そんな気持ちを大事にしながら、これからも指導にあたっていきたいと思っています。
取材・構成 = メディバンクス

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