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看護・医療しゃべり場 インタビュー編

【「生きる」を支えるがん看護】 がん患者の暮らしを支える 看護の重要性 

 抗がん剤治療の進歩や、医療制度の変遷などにより、主ながん治療の場は外来に移行してきました。その結果、がん治療は人々の暮らしの中で行われるようになり、看護師には多様性・複雑性に対応する能力が求められています。

 今回は、がん看護専門看護師、がん化学療法看護認定看護師として、長年がん看護に携わってきた浅場香先生に、がん患者の暮らしを支えるための看護についてお話を伺いました。

一人ひとりの生き方に応じたがん看護

 近年、 「暮らし」 をキーワードに、がん患者さんへの関わりに変化が起きています。 がんを患う方は、 初めから 「患者さん」 ではありません。 一 時的に入院して 「患者さん」 になりますが、 退院すれば日常生活に戻っていきます。 外来においては、 治療の中に暮らしがあるのではなく、 暮らしの中に治療があります。私たち医療者は 「患者さん」を 「暮らしている人」 と意図的に捉 え直す必要があります。 その方の暮らしを知ったうえで看護のニーズを把握し、 看護ケアを提供することが重要視されています。
浅場 香 先生
修文大学 看護学部
地域・在宅看護学領域 准教授 
がん看護専門看護師
がん化学療法看護認定看護師
浅場 香先生
 時代の流れをみても、 地域包括ケアシステムの推進に向け、 看護師の活躍する場所は医療機関から在宅へ拡がっています。 より暮らしを知る重要性が増し、 患者さんの多様性 ・ 複雑性に対応した看護を創造する能力が求められるようになりました。 その能力を有する看護師を育成するため、 従来の 「在宅看護論」 は地域で暮らすすべての人々を対象とする 「地域 ・在宅看護論」 に変更されました。2022年4月から新教育カリキュラムに改訂され、 1年次から学ぶ基礎教育に組み込まれています。 対象の暮らしぶりを捉えたアセスメントと看護を展開する力が求められています。

暮らしを理解したケアの重要性

 暮らしの中で看護を提供するためには、 がん患者さんの暮らしぶりを知る必要があります。 医療者は対象の生活の中で、 がん治療が何を置いても優先されると思う傾向があります。 対象の暮らしぶりを知ると、 その方が自分の治療よりも家族のことを優先していたり、 状況によっては子どもの養育や親の介護に労力が注がれている場合もあります。 その背景を理解したうえで、 専門性を発揮し、 その方にとっての看護のニーズをつかむことが必要です。

 例えば、 抗がん剤治療には副作用がありますが、 「副作用があるから介入する」 というだけではなく、その症状が生活に与える影響や、どうすればうまく生活ができるのかを考えることが大切です。 そうでなければ、 暮らしの中ですべきことが増えて、 負担になっ てしまいます。

 看護には、 数多くの研究から 「よりよい看護ケア」 の方法が明らかになってきています。 これからは、明らかになった 「よりよい看護ケア」 を必要とする人に提供して、 対象がより暮らしやすくなっているかを明らかにしていくことが求められます。 医療と暮らしを看る視点を大切にし、 その方が必要とするケアを提供するのが看護師だからこそできることだといえます。 その看護ケアが本当にQOLの向上や、 幸せにつながっているのかどうかを忘れないようにしましょう。

 多くの実践報告や研究により、看護ケアに関する知見が蓄積されていますが、 そのケアを対象にけるためには、 関わるための時間も必要です。 どのタイミングで、 どのように看護ケアを提供するのか、 それを阻む要因は何かなど検討が求められます。 看護管理者と協働し、 「よりよい看護ケア」 を対象に届ける仕組みを実装していくことが今後の課題です。 そのために、 学生への基礎教育、 臨床看護師へのリカレント教育が求められています。

 私たちの 「よりよい看護ケア」 が必要とする方々に適切に届き、 その方の治療中の生活が暮らしやすくなることを目指しています。

POINT

暮らしの中に治療がある

がん治療の中心が外来へ移行し、在宅で生活しながら治療をする方が増えています。暮らしの中で治療を受ける方の多様性・複雑性を理解したうえで、看護のニーズをつかみ、適切なケアを届けることが大切です。

看護はQOLの向上や 幸せにつながることが大切

看護ケアを提供するとき、医療者自身が良いと考えるアウトカムばかりに目を向けてしまうことがあるかもしれません。しかし、その看護が本当に患者さんのQOL向上や幸せにつながっているか、その視点を忘れないようにしましょう。

質の良い看護を 届けるためには教育から

現在、看護には十分な知識や技術の蓄積がありますが、それを実践に活かすための仕組みが不足しているように感じます。そのため看護師の教育が必要であり、臨床でのリカレント教育や、学生への基礎教育が今後の課題だと考えています。

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