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古武術介護第1回

【古武術介護】 第一回 介助技術の土台となる下半身

投稿日:2014.10.29

技術以前の体の使い方が重要

それでは、具体的な介助技術の改善のための戦略を紹介していきます。

2013年、厚生労働省から医療、介護職への腰痛予防対策への指針がだされ、大きな話題となりました。車椅子やベッドへの移乗動作を中心とした様々な介助は身体的な負担も大きく、腰痛等は職業病・・・そういった認識は世間的にも残念ながら広まっています。

そこで、介助技術そのものがいけないという声も上がっていますが、私はそうは思いません。問題の本質は、技術そのものではありません。技術のベースとなる、私たちの普段の動き方が、すでに体を痛めやすい状態にあること。つまり、介助技術以前の私たちの普段の動作を根本から改善することが最大の課題なのです。

それらを改善するためには、全身の連動性を高めること、それに尽きます。言い換えれば、私たちは、肩や腰、膝など部分的に体を酷使する傾向にあり、全身が上手く使いきれていません。

ただ、いきなり全身を使ってというのも難しいため、ここでは、上半身、下半身、体幹部と全身を3つに分割して、介助技術での役割、痛めやすい原因、と改善方法を説明していきます。 第1回は最も重要で技術の土台となる下半身の動きからです。

●下半身の役割は介助技術の土台

介助技術において下半身の役割は「土台」です。土台がぐらついてしまうようでは、技術の安定性もなくなり、患者さんを安全に移動させることも出来なくなります。その意味からも最も重要なところと言えます。

下半身の中でも最も大事なところは、足首でも膝でもなく、足の付け根である、股関節がポイントとなってきます。ところが、私たちは上手く股関節を動かせていない傾向にあります。 私たちの生活スタイルは欧米化されたもので、特に椅子に座る動作により、膝中心の動きで生活する癖がついています。

膝関節は屈曲進展のみと動きも限定され、使われる筋肉も太腿の前側が中心となり、膝一点に負荷が集中しやすくなります。しかし、それに対して股関節ならば、動く範囲も屈曲進展だけでなく、開く、閉じる、回すなど大きく動かせ、それに伴い、太腿の筋肉も前側だけでなく全体が使えます。そして、負荷も全体に分散され、痛めにくい動きが可能になります。

●股関節の動きをチェック

股関節がしっかり使えているかどうかは、草取りの動きをしてみるとチェックが出来ます。

まず、椅子に座るのであれば、股関節は90度曲がればいいですが、しゃがむ場合には120~130度は必要です。しかもその姿勢から歩く場合には、膝一点に負荷がかかり、筋肉も太腿の前側ばかり使いがちです。

実はちゃんとしゃがむためのベースとなるのは和式の生活スタイルだと言われています。和式生活で重要な動作となる排泄で、和式便座だと、そのまましゃがむ動作につながります。

また、寝たり起きたりという生活全般の動作も、畳上だと欧米型と比べ、圧倒的に股関節をしっかりと使い、それに伴い、太腿の前だけでなく、内側と裏側全体を使い、結果として負荷も分散しやすくなります。

そうした生活動作の基礎がある状態で草取りを行うと、股関節から膝を倒すことで、 太腿の裏側、内側、前側と、全体的に筋肉が使われ、それに伴い負荷も分散し、疲れにくい合理的な動きが引き出されてきます。

●「草取り」に見る 股関節の動きの悪い例

腰が高く、股関節を使わず膝から足を投げ出すような、膝中心の動き方になる。現代は椅子中心の生活スタイルになり、動く以前にきちんとしゃがめない人も少なくない。

●「草取り」に見る 正しい股関節の動き

膝を中心に動くのではなく、股関節を意識して動く。股関節から膝を倒すように歩くことで、負荷も分散されやすく、全体の筋肉が使われるので疲れにくい。

●股関節の動きを改善する

介護技術でも、しっかりと股関節が使えていれば、足腰全体が上手く使えて、安定した体勢と動きが行えるようになります。そのためには、普段使っていない股関節の動きを効率的に引き出す必要があります。

具体的な改善方法としては、腰を下ろしていきながら、膝、つま先を広げていきます。腰を下ろして股関節を広げていくことで、大腿の前側、内側、裏側の筋肉が使われていきます。立ち上がる際には、膝、つま先を広げながら、大腿の裏側、内側、前側の筋肉が使われていきます。

上下動に、らせん状の動きが加わったというイメージで行うと良いでしょう。ただし、きつかったら、両膝に両手をあてながら、または椅子に座りながらでもかまいません。要は、普段使っていない股関節の動きを無理のない範囲で引き出していくことが重要です。

この動きは筋力トレーニングではなく、股関節の動きを引き出すための、「使い方」の公式です。

例えば、車を運転する場合に重要なのは筋力よりも、いかに力まず、時に繊細に操作できるかが大事になってきます。それと同じで、体を操縦する、つまりよりよく使いこなすためには、土台の股関節が合理的に操作できるように取り組んでみましょう。

●股関節の動きを引き出す

・腰を下ろしながら、つま先、膝、股関節を外に広げていく。
・横から見るとしっかりと股関節が広がった結果として、つま先も広がっている 。
・立ち上がる際はその逆で、つま先、膝、股関節を内側に向かい閉じていく。  

・全身はリラックスさせ、踵は上げず、足はフラットに接地した状態で行う。最初はある程度滑りやすい床や畳で、靴下のまま行うと動かしやすい。

・10回程度、股関節、筋肉の動きを意識しながら行う。

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