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橋爪 謙一郎先生のグリーフケアコラム第1回

第1回 医療の現場でできるグリーフサポートとは 

投稿日:2011.06.12

皆さんは、「グリーフ」や「グリーフケア」と言った言葉を聞いたことありますか?
皆さんは、「グリーフ」や「グリーフケア」と言った言葉を聞いたことありますか?
日本語では、「グリーフ」は「悲嘆」と翻訳されます。あるいは、この翻訳された「悲嘆」と言う言葉自体聞いたことのない方もいるかもしれません。


医療の現場でも、患者やその家族に対し「治療」だけでなく彼らに「心的な支援」を含めた様々な支援を行わなければならないケースが多くなってきています。その為もあってか、「グリーフケア」に興味を持っている人も増えています。これまでは、ガン患者やその家族と接している方や、終末期医療に携わっている方が、専門的に学ぶというケースはありましたが、最近はその他の病棟に勤める看護師の方の中にも興味も持ち始めた方が増えています。弊社で主催する「グリーフサポートセミナー」に参加される看護師の方も増えつつあり、グリーフケアに対する関心の高さを実感しています。


弊社で提供するセミナーやカウンセリングなどを通じて出会った遺族から、誰に助けを求めていいのか分からず、また家族や友人に心配や負担をかけたくないとの思いから、自分の心にフタをして必死に毎日を過ごしているという話を多く聞きました。


書籍を買っても自分の気持ちが楽になる本には出会えなかった、とお話しする方も少なくありません。さらに、折れてしまいそうな心を支えてくれたり、気持ちを分かち合う機会を提供してくれたりする遺族支援の会やカウンセラーを見つけることに到っては、どこが自分にあっているかを探し出すだけでも、困難を感じている方は多かったのです。


インターネットの発達とともに、色々な情報を容易に入手できるようになっても、「グリーフ」と言う単語を知らないだけで、自分が得られる情報には大きな差が現れてしまいます。日本では、グリーフケアに関する専門的な文献やご遺族のための分かりやすい書籍もまだまだ少なく、必要な情報が多くの人に届いていないのが現状です。


元々日本の習慣や文化においては、家族同士や近しい人同士が支えあうことによって、死別の悲しみとの折り合いをつけてきました。しかし、地域社会や家族の形態を初めとする人間関係が変化してきたことで、現在ではその様な「サポート」の基盤が少なく、全く持っていない人も増えているのです。家族の形や地域との付き合いのあり方も変わってしまった今、グリーフの苦しみに一人で立ち向かわざるを得ない状況なのです。


大切な人を喪い、心の中に悲しさ、苦しさ、悔しさなどが次々と湧き上がっているにもかかわらず、グリーフについてよく知らなかったり、感情を表に出さずに、平然と毎日を送るのが当たり前という考えが多かったりすることによって、「感情」や「思い」を抑え込み自分の心にフタをしてしまう。これがグリーフなのです。


私は1994年にアメリカに留学し、大学院や、アメリカにおけるグリーフケアの第一人者であるアラン・D・ウォルフェルトからグリーフケアを学び、研究し、さらに現地でご遺族のケアに携わる中で「日本人に合ったグリーフケア」を構築してきました。そして今、あえて、「グリーフサポート」という名前をつけて実践しています。この連載では、グリーフサポートのノウハウや専門知識、スキルなど実際の業務に生かす為に必要な事を理解しやすく伝えていきたいと思います。


終末期に不安を抱えている患者やその家族、救急医療現場において、突然の死に向き合えないでいる家族への支援など、医療現場でのグリーフサポートの必要性は増しています。入院や治療の過程で築いた信頼関係を生かし、支援が必要な家族を支える上で、この連載を役立てていただければ嬉しく思います。

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