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”触れる”を通して看護の原点を見つめ直す

「タクティールケア」第二回 薬に頼る前の便秘対応

第二回 薬に頼る前の便秘対応

便秘が続くと心身に不快な症状をもたらすため、適切に下剤を使用して排出することが一般的になっています。

一方、緊張やストレスによる自立神経の乱れが原因の便秘は、タクティールケアを実践することで症状が緩和されるかもしれません。薬に頼る前にタクティールケアでリラックスしませんか?
株式会社アポロ・サンズHD看護部部長、シルヴィアホーム認定インストラクター、看護師、元日本赤十字看護大学認知症看護認定看護師教育課程非常勤講師

腸の緊張を解く

 便秘の原因は、疾患の影響や食事量の不足、腹圧や直腸収縮力の低下など様々ですが、緊張やストレスによる便秘は、朝の蠕動運動の低下を解決することが必要です。

 腸の蠕動運動は、自立神経である副交感神経が優位のリラックスした状態で活発になります。逆に環境の変化やストレスによって交換神経が優位になると。腸にも緊張状態を惹き起こし、動きが悪くなります。

 こんな時、皆さんはまず自分の手をおなかにあて、深呼吸をしながら「の」の字を書きませんか?これは、便の移動する流れに沿って腸を刺激するとともに、朝の緊張を緩めリラックスさせる効果をもたらします。
ナースマガジンVol.33で述べたように、触れるという刺激は副交感神経のバランスを整え、ストレスを和らげるオキシトシンの分泌を促します。この時、深呼吸で酸素を多く取り込むことで血管の緊張が緩み、それに伴い筋肉の緊張もリラックスした状態になります。便秘が続いて溜まった便を押し出すためには、食事の工夫や薬剤の利用も必要ですが、まず腸の緊張をリラックスさせましょう。

排泄介助で緊張させない

 病院や介護施設で便秘の方をトイレで介助するとき、便意は感じていても出ない、ということがありますそういう時私は、後ろに立って背中のタクティールケア(ナースマガジンVol.32参照)を行います。また普段からベッド上でお腹を「の」の字でマッサージしたり、背中のタクティールケアを行っています。タクティールケアを取り入れてリラックス効果を図りながら下剤をうまく使っていくと、より排便がスムーズになるのではないかと思います。
 ここで気を付けたい事は、

●排泄している姿は羞恥心から見られたくない
●他人にカラダを触れられること(特にお腹、顔、頭など)には多少なりとも抵抗感を伴う


という相手の気持ちを重視することです。緊張を解くためのタクティールケアで緊張させてしまっては本末転倒。事前にお互いの信頼関係を築いた上で始めないと、逆効果になることもあります。
 背中のタクティールケアをするときはその方の視野に入らないよう、安全を配慮した上で後ろに立ちます。日本のトイレの構造上、真後ろにはお水のタンクがあって立ちづらいので、そのような時はその人の横に立ちます。いきむポーズがしやすいように、本人にちょっと前かがみになってもらい、片手で肩を支え、もう一方の手でできる範囲のタクティールケアを行います。

 認知症の方はトイレにいる目的を忘れてしまうこともあり、トイレにいるのに「出ちゃうよ!」と不安そうに叫んだ方がいました。「大丈夫ですよ、私。ここにいますからね。背中さすっても良いですか?」と、背中のタクティールケアを行ったところ、安心した様子で排便できました。排便後。2人で「こんなの出ましたよ!」「すごいね、たくさん出ました」と喜びあったものです。
 タクティールケアの実践では相手の状況を把握し、その人にとってベストな環境を工夫した上でどう向き合ううか、がカギになります。リラックス状態や安心感、心地よさを引き出すことがタクティールケアの本質であり、その心地よさを通して心身の不調の緩和がもたらされるのですから。
タクティールケアについて詳しく知りたい方へ
株式会社日本スウェーデン福祉研究所(JSCI)

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