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ナースマガジン vol.39

【何ぞやシリーズ第34回】 マイクロクライメットって何ぞや?

投稿日:2022.08.29

褥瘡予防のポイントは、「圧迫」「摩擦」「ずれ」の回避、適切なスキンケア、必要十分な栄養摂取であることは皆さんご承知のことと思います。
そしてもう一つ、忘れてはならないのが局所のマイクロクライメット管理。
さて、マイクロクライメットって、何ぞや?


マイクロクライメット管理こんな場面は要注意!

 マイクロクライメット管理は、日常的に行っているケアとの関連も多いぞ。注意すべき場面を見直してみよう。

①失禁対応

ノンテクニカルスキルを教育するため、アメリカで開発された「チームSTEPPS(※チーとしてのより良いパフォーマンスと患者安全を高めるための戦略とツール):チームステップス」というツールがあるんだ。チームワークを向上させて、医療事故を減少させるのに有効だといわれているよ(2)。

特に感染対策では、チームSTEPPSの中の「SBAR(エスバー)と「相互モニター(クロスモニタリング)」というツールが活用されているね。SBARは情報伝達ツールで、看護師から医師への報告の際に使われることも多いんだ。
 インナーパッドも透湿性のあるものがオススメということですね。紙おむつやインナーパッドの適切な選び方や使い方の指導は、褥瘡ケアの第一歩!

②体圧分散・姿勢保持

 体圧分散用具といえば褥瘡予防マットレスやクッションがよく使われているよね。湿度や温度をコントロールできる機能がついているマットレスもあるけどマットレスの柔らかさには注意が必要だ。柔らかすぎると体が埋まって常に皮膚がマットレスの表面と接触している状態で汗をかきやすく、その汗が吸収されないままになることもあるからね。
 体圧分散用具や姿勢保持のクッションはよく使われるものだけに、皮膚と接するカバーも温度や湿度がこもらない性質のものを選ばなくちゃ。

③加温・暖房

 寒い時期には、湯たんぽを布団の中に入れたり使い捨てのカイロを使ったりすることもあると思うが、直接皮膚に当ててはダメだぞ。低温熱傷のスキントラブルが多いのは知ってるだろ?
 それに、温まると新陳代謝が活になって、汗もかきやすくなるわ。真冬に同行訪問した時、室温を上げ過ぎたり布団をかけすぎたりしている在宅患者さんもいて汗をかいて真っ赤な顔をしていたっけ。言葉で「暑い」と伝えられない方もいるから、体温だけでなく顔色や表情も注意深く観察しないと。

低体温にも注意が必要

 汗をかかないようにするなら、強めの冷房で室温を下げればいいんじゃない?
 それは適切な温度管理とはいえないわ。体温が下がると血管が収縮して血流も悪くなるでしょ。皮膚細胞に必要な酸素や栄養がいきわたらなくなるし、サイトカイン(※)の活性が低下する場合もあるから、褥瘡ができやすく治りにくくなるんですよね、先生。
 その通り。例えば手術室の室温が低すぎると、褥瘡ができやすかったり合併症発生リスクが上がることもあるそうだ。皮膚の温度は高すぎても低すぎてもその生体機能を低下させてしまう。温度管理は、 「その人の平熱を保つ」ことが大切だと知っておこうね。

 褥瘡予防のためには様々なアプローチがあるけれど、温度・湿度管理が適切でないと、その効果を弱めたり褥瘡発生要因になったりすることを理解して取り組んでいこう。
(つづく)
※細胞が産生・放出する分子量30kD 以下の小さな可溶性蛋白あるいは糖蛋白であり、標的細胞表面の受容体に結合して細胞の分化、増殖、活性化を制御することで、炎症、免疫応答、細胞増殖など生体の生理機能を調節する液性因子を総称してサイトカインと呼ぶ。(日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック第2版.234頁より引用)
■監修:日本医科大学千葉北総病院 皮膚・排泄ケア特定認定看護師 渡辺光子先生

■参考:真田弘美、宮地良樹(監訳):褥瘡の予防と治療:クイックリファレンスガイド 日本語版 第二版.メンリッケヘルスケア株式会社. 2014

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