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ナースマガジン vol.37

聴きある記:第56回 日本成人病 (生活習慣病) 学会


会 期:2023年1月14-15日

会 場:都市センターホテル(およびYouTube配信)

会 長:野川茂氏(東海大学医学部付属八王子病院)

テーマ:ウィズコロナ時代の超高齢社会を生き抜く
2日目のシンポジウム3「糖尿病治療update」 では、4名の演者が登場。
糖尿病治療の歴史から最新状況などについて発表した。 以下に要旨を紹介する。

シンポジウム3 糖尿病治療update

座長:
塚本和久氏(帝京大学医学部内科学講座)
佐藤麻子氏(東京女子医科大学臨床検査科)

1  糖尿病治 療update

黒田暁生氏(徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター)
 糖尿病の治療薬は1980年代まではSU薬と通常のインスリンのみであったが、93年にαグルコシダーゼ阻害薬、99年にビオグリタゾン、ナテグリニド、2000年に新規SU剤グリメピリドが上市された。 2001年には超即効型インスリン、2003年に持効型溶解インスリンが上市されⅠ型糖尿病の血糖管理が目覚ましく改善した。 2009年にDPP4阻害薬が上市され、 低血糖をきたさず高血糖を改善する薬として、 内服薬として最も処方される薬となった。2010年にはGLP-1受容体作動薬が発売され、初のインスリン以外の糖尿病治療薬となった。 2018年にはSGLT阻害薬がⅠ型糖尿病患者にも適応となった。 2022年よりリアルタイムCGM値に応じてインスリンポンプの基礎注入量を調節するハイブリッドクローズとインスリンポンプが上市されたが、 3割保険負担で3万円/月となり患者負担が大きい。 現在は糖尿病の治療薬が多くなり、専門医でなければ処方が難な時代となった。

2 インスリンとGL P ‐1受容体が織りなすこれからの糖尿病注射療法

弘世貴久氏(東邦大学医学部内科学講座)
 糖尿病治療において長らく唯一 の注射療法であったインスリン療法に加えGLP-1受容体阻害薬は海外で心血管系疾患抑制が証明され、2018年以降欧米のガイドラインでも第 一 選択薬とされている。GLP-1受容体阻害薬と基礎インスリン配合剤の登場により、治療薬の使い方は新たな哲学で臨む必要がある。

3 経口糖尿病治療薬の特徴とエビデンス

鈴木亮氏(東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科)
 わが国において2型糖尿病の第一 選択薬として処方される経口血糖降下薬は、DPP-4阻害薬、ビグアナイド薬、SGLT2阻害薬である。 米国糖尿病、学会はアルブミン尿を呈する慢性腎臓病に対してSGLT2阻害薬の使用を優先し、アルブミン尿のない場合はGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬の使用を推奨している。 これまでGLP1作動薬は注射製剤のみであったが2021年に経口セマグルチドが使用可能となり、 2021年にはイメグリミンが処方可能となり治療の選択肢が増えつつある。

4 肥満を伴う糖尿病への行動療法

正木孝幸氏(大分大学医学部内分泌代謝膠原病腎臓内科)
 肥満を伴う糖尿病の治療において食習慣や運動習慣の把握は非常に大切である。 行動療法で重要なことは、その行動変容が医療側の指摘によってなされるのか、患者側の気づきによって行われるのかが大事な点である。 患者自身が問題に気付き、 自主的に生活習慣を改善する行動を選択遂行したときに長期維持が可能となる。 肥満を伴う糖尿病の治療を進めるうえでは医師以外の看護師・栄養士などを含めた多職種でアプローチすることが重要で、 各患者の情報を共有することが大切である。 自施設では食行動質問表、 グラフ化体重日記、30回咀嚼法などを用い、活動計、歩数計などによるモニタリング、 スマートフォンのアプリなども用いている。 コロナ禍において、遠隔医療についても 一定の効果があると報告されている。

(ニュートリション・アルファ 西谷誠)

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