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ナースマガジン vol.45

【何ぞやシリーズ第39回】糖尿病スティグマとアドボカシー活動ってなんぞや?

投稿日:2023.11.24

糖尿病スティグマとアドボカシー活動って何ぞや
知識不足や誤ったイメージにより、糖尿病のある人は「スティグマ(社会的偏見による差別)」にさらされてしまうことがあります。
医療者でさえ、無意識にスティグマにあたる言葉を使っていることも。この問題の解消のために、「アドボカシー (権利擁護 )活動」が必要とされています。
さて、糖尿病スティグマとアドボカシー活動って何ぞや?
作画 : 上田みう   制作 : マンガエッグ・エンターテイメント

糖尿病スティグマとは

最近、糖尿病スティグマという言葉が注目されるようになったね。糖尿病スティグマは、糖尿病があるというだけで、社会的な不利益やいわれなき差別を受けることをいうんだ。例えば、糖尿病があるだけで生命保険や住宅ローンに加入できない、就職や昇進、結婚に影響するなど、さまざまな不利益はスティグマにあたるといえるね。
病気によってその人を判断してしまうのね。でも糖尿病スティグマという言葉は今まで聞いたことがなかったわ。
アメリカでは糖尿病スティグマへのアドボカシー(権利擁護)が以前から重視されていたけど、日本では取り組みが進んでいなかったからね。もちろん日本にも糖尿病スティグマの概念はあったのだが、2019年に日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が合同で「アドボカシー活動」を始めたことで、特に注目されるようになったんだ。この活動は、糖尿病の正しい理解を促進する活動を通じて、糖尿病のある人でも安心して社会生活を送り、いきいきと過ごすことができる社会形成を目指しているんだ。

糖尿病スティグマの具体例

ノンテクニカルスキルを教育するため、アメリカで開発された「チームSTEPPS(※チーとしてのより良いパフォーマンスと患者安全を高めるための戦略とツール):チームステップス」というツールがあるんだ。チームワークを向上させて、医療事故を減少させるのに有効だといわれているよ(2)。

特に感染対策では、チームSTEPPSの中の「SBAR(エスバー)と「相互モニター(クロスモニタリング)」というツールが活用されているね。SBARは情報伝達ツールで、看護師から医師への報告の際に使われることも多いんだ。
でも僕たち医療従事者は気をつけているから大丈夫だよね?
いや実は、医療従事者も不適切な言葉を使っていることが珍しくないんだ。例えば糖尿病のある人の特徴を捉えて「糖尿病気質」と一括りにしたり、HbA1cが上昇していたら「食べすぎたでしょ」と決めつけたりね。また「理解力がある」という表現も、スティグマに含まれるから注意が必要だよ。これは、医療者の言うことに従わない人が悪い人だという価値観に基づいた発言だからね。
よき理解者であるべき医療従事者でも、当たり前のように糖尿病スティグマにあたる言葉を使っていたのね(図)
医療従事者による糖尿病スティグマ

まずは言葉から変えていくことが大切

医療従事者がすぐに実践できるのは、普段使っている言葉を変えていくことなんだ。医療用語のなかにはスティグマを含む言葉が多いから、それを変えることで意識も変わっていくだろうからね。
確かに言葉が変われば私たちの意識も変わっていきそうね。
例えば「血糖コントロール」は、糖尿病がある人をコントロールするような、支配的な目線になってしまいがちだから「血糖マネジメント」に変える。同様に、 「指導」は、 「支援」 「教育」 「アドバイス」など、文脈によって使い分けるとよいぞ。実際に「言葉を変えたことで、糖尿病のある人がそれまでより多くのことを話してくれるようになった」と効果を実感した看護師もいるからね。
私たちが普段使っていた言葉も、改めて見直すことが必要よね。これからは糖尿病のある人とよりよい関係のもと、協同して治療について決めていくことが求められているのね。
(つづく)
■監修
国家公務員共済組合連合会 枚方公済病院 内分泌代謝内科部長 田中永昭先生

■参考
公益社団法人 日本糖尿病協会日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同 アドボカシー活動 
https://www.nittokyo.or.jp/modules/about/index.php?content_id=46

監修の田中先生より動画メッセージ

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