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    看護師国際サミット

聴きある記:
看護師国際サミット

投稿日:2024.01.24

会 期:2023年11月12日
会 場:東海大学伊勢原キャンパス(オンライン同時開催)
主 催:佐藤太一郎(Nurse Terminal代表)、研谷美月(BeLight Medical Professionals LLC代表)
テーマ:世界中で活躍する看護師に出会える夢のようなイベント


グローバル社会にあって、看護師のキャリアとして海外に居場所を求めることは珍しいことではなくなった。海外で働く看護師の多様な価値観に触れることで、自分のキャリアを一歩踏み出すことを目指した「世界中で活躍する看護師に出会える夢のようなイベント」が11月12日に開催された。
左:研谷美月(BeLight Medical Professionals LLC代表)  右:佐藤太一郎(Nurse Terminal代表)


世界の救急医療

 オーストラリアとアメリカで救急医療に携わる3人の看護師が登壇し、それぞれが勤務する地域での救急医療や、救急医療に携わる看護師のキャリアについて講演した。その中からMikaさんとEmiさんのセッションについて概要をお届けする。

オーストラリアの救急現場と社会問題 薬物、アルコール依存、路上生活などの社会問題に迫る

Mikaさん:日本の病院で救命救急を経験した後渡豪し、看護大学を卒業。シドニーの病院で救命救急看護師として勤務。
 薬物、アルコール依存、路上生活者に対し医療従事者がどう関わるか。オーストラリアでは医療現場が抱える課題の1つである。スピーカーのMikaは、「一個人としての見解、経験ではあるが」としたうえで、次のように述べた。シドニーの市街地にある公立病院は、ヘロインやコカインなどの違法薬物による中毒者や、アルコール依存の既往歴がある人が多く搬送されてきていた。薬物の過量服薬による意識障害、心肺停止、清潔でない注射器を使った薬物注射による蜂窩織炎や敗血症、アルコール依存症離脱症状、ホームレスの受け入れなど、日本の病院ではあまりなじみのないコンディションの患者さんが繰り返し搬送されてくる。搬送して治療するだけでは問題の根幹を解決することは難しいことから、救急医療のすぐそばに彼らをサポートするさまざまなシステムが整えられている。

1.オピオイド依存に苦しむ人々が社会復帰するためのサポートプログラム:オピオイドの離脱症状が起こらないよう、オピオイドに類似した効果を体に起こす長時間作用型の薬を指定の薬局、医療機関にてそのコントロール下で服薬することで、日常生活を送れるようにするプログラム。

2.過量服薬、薬物によるけが予防や注射による感染症予防、救命救急センターの負担軽減、地域コミュニティの安全を目的に作られたインジェクションセンター:医療従事者が常駐し、その監視下で清潔な針や物品を使用して薬物を安全な環境で注射できる場所。さまざまな意見があるが、この施設のおかげで多くの命が救われている現状がある。

3.アルコール依存症離脱のためのリハビリプログラム

4.ホームレスの社会復帰プログラム:ソーシャルワーカーが救命救急センターに常駐し、シェルターの紹介やリハビリプログラムの仲介をする。

 最後に、サポートシステムのリンク先を紹介し、海外で救急医療に携わりたい人たちにこのような事実にも目を向けることを呼びかけた。


銃社会の看護と人間模様

Emiさん:フロリダ州ICU看護師
アメリカは銃を護身用として合法的に所持できることから市民にとって身近な存在である。一方で銃創による搬送は後を絶たず、26床あるICUに必ず1人は銃創患者さんがいる。ギャングの抗争による銃創はもちろん、多様な背景を持つ家族のトラブルが理由になることもある。若い子が家族による銃創で搬送され、蘇生を施しても回復の見込みがないと判断され、家族に「助からない」という事実をどのように伝えるかを考えるのが看護師の仕事の1つだ。蘇生の見込みがないことを医師から聞き、その場で泣き崩れ「心臓マッサージをとめないで!」と母親が叫ぶ光景は珍しくない。そのような日常は看護師自身も強いストレスを受けることから、現場では常に気を張っていることが多い。海外に居場所を見出して頑張っている人のストレスコーピングについて2人の登壇者に投げかけた。

Mikaさん:
同僚や海外で働く日本人看護師仲間と話し、自分の気持ちを聞いてもらうことがとても大事だと思う。

Eriさん:
その場で何を感じたか吐き出せるような環境が用意されており、気持ちを整理することができる。海が近いので休みの日は海に行き、仕事と切り離す時間を作る。

 それぞれの経験を踏まえ、目標に向かって頑張る自分を好きになり、あふれる情報の中から自分に合ったものをみつけること。そして日本にいる間に経済的な準備をしておくことが大事と参加者にアドバイスを送った。

 会場内には「国際看護師を体感できる展示会」と題した写真展と展示ブースも設けられ、海外の看護師資格を取得するために登壇者たちが実際に使っていたノートや参考書、看護師が世界のどこで活躍しているのかがわかるマップ、国境なき医師団で派遣される際の実際の荷物など、「リアル」にこだわった8個の展示が並んだ。展示品の持ち主がその場にいるタイミングもあり、将来海外で働くこと関心を持つ看護学生や看護師は直接経験談やアドバイスを聞き、自身のキャリアを具体的に思い描いていた。

国際看護師を体感する展示会



また「あなたの夢も教えてください」と、参加者や登壇者が自身の夢を書き込む大きな紙が壁一面に張られた。朝のうちは書き込みが少なかったものの徐々に書き込む人が増え、イベント終盤には紙いっぱいに思い思いの夢が書かれ、多くの人が足を止め1つ1つ読んでいる姿が目だった。 
[取材・執筆] N direction 高山 真由子

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