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    「学びあい育ちあう場をつくるプログラムデザイン」
ナースマガジン×アルケア株式会社  ナーシングケアワークショップ

組織づくりに活かせるファシリテーションを学ぶ
「学びあい育ちあう場をつくるプログラムデザイン」

投稿日:2024.04.19

看護の現場では課題解決に取り組もうとする際、患者さんの尊厳と安全を守る看護を実践するためには組織全体で取り組むことが必要です。そのためには単にリーダーが号令をかけて引っ張っていくのではなく、組織の現状について語り合える場を持ったり、全員が対話技術を身に付けていくことが重要になります。
2022年9月・12月、看護管理者を対象に“組織づくりに活かせるファシリテーション”をテーマとして双方向のワークショップ形式の研修が開催されました(主催:アルケア株式会社)。このワークショップに中川部長をはじめ、3人で参加したことを機に、院内組織の再構築に挑む羽島市民病院(岐阜県羽島市)の看護管理者の方たちが研修に参加した理由や感想、研修後の活動について伺いました。
お話を伺った方たち 羽鳥市民病院

ナーシン グ ケアワークショップとは

アルケア株式会社がオンラインで開催している参加型のワークショップ。
看護管理者を対象とし、課題解決に向けたファシリテーションスキルを起承転結の流れで学ぶ。

ワークショップの流れ

ねらい

①学び合いの風土をつくるためのファシリテーションがわかり、体験を通して、自分も何かできそう、何かやってみようと思える。
②プログラムデザインの方法がわかり、実際に実践のプログラムができる。
③自分のプログラムデザインをもとに、何かトライしてみようと思える。

アウトカム

研修を通してプログラムデザインの方法を理解し、実際に作成したプログラムを実施できる。
また、他の参加者のプログラムからヒントを得て活かすことができる。

看護ファシリテーション ワークショップ講師

浦山絵里 先生
ナースファシリテーター
ひとづくり工房 esuco 代表
杏林大学医学部付属病院に長く勤務し、病棟看護師長を経験。
2007年ひとづくり工房 esucoを起業し、ナースファシリテーターとして各地の看護協会、病院での研修講師や人材育成に携わる。
生涯学習財団認定ワークショップデザイナー。


看護×ファシリテーションで生まれる
「対話型リーダーシップ」

 ファシリテーション(facilitation)は、「促進する、〈事を〉容易にする」 という意味を持つ英語で、参加の場をつくり、対話を促進することで思考が深化し、気付きが生まれるプロセスをつくることを指します。
 看護管理者はスタッフ一人ひとりが個性を発揮し、チームの一員として生き生きと働いてほしいと考えています。しかし、看護管理者もスタッフも目の前の業務に追われ、考えるゆとりを持てない現状があります。そこからの脱却を図るためには、自分の体験から得た気付きをわかりやすい言葉にして持ち寄り、学び合う対話の場が必要です。看護師は院内での会議や委員会、患者さんやご家族、多職種・多施設など、さまざまな人たちと関わりを持っており、必ず「対話の場」が存在しています。トップダウンによるマネジメントも時には必要ですが、対話を通して多職種が相互理解を図り、チームとして活動することが求められています。

ワークショップ研修を受講した
  羽島市民病院看護部の取り組み

ワークショップでの学びや気づきと効果


看護部の中核を成すことになって

中川:
 コロナ禍だった3年前、看護部長・看護副部長・上席看護師長が同じタイミングで就任し看護部の中心となり、組織を運営していくことになりました。当初はコロナ病棟編成や人員配置など、目の前の組織運営に精一 杯で、人材育成やスタッフの意見に耳を傾けたり想いに馳せたりすることができず、強引なリーダーシップで組織を成り立たせていました。看護部長としてそれは大きな課題だと感じ、自分の考えを伝えて相手の話も聞ける、ファシリテーションスキルを持った次世代のリーダーを育成していくことが私の使命だと考え、偶然手にした研修案内のチラシを見てすぐに参加を決めました。

ワークショップを通して看護を伝える

大内:
 今まで会議に参加した時は自分がまとめなければと思ったり、沈黙が続くことに耐えられずつい発言してしまうことが多くありました。しかし、研修に参加して沈黙の時間の意味や全員が平等に発言することも含めて対話の場をつくることが大事であること、また、その対話の場で参加者のゴールがどのようなものかを考えた上で、時間をかけて準備を行うことを学びました。 部長が就任してからの2~3年は、私たちが目指す看護師像を常に口にしてみんなに伝えてきましたが、どうやって自分の言葉にして伝えていくかが自分自身の課題でした。この研修で認識が変わり、組織の在り方などリーダーが示す際にはファシリテーションスキルを活かし看護を伝えると同時にみんなで語り合うことが重要だと気付きました。

ワークショップを通して看護を伝える

大内:
 今まで会議に参加した時は自分がまとめなければと思ったり、沈黙が続くことに耐えられずつい発言してしまうことが多くありました。しかし、研修に参加して沈黙の時間の意味や全員が平等に発言することも含めて対話の場をつくることが大事であること、また、その対話の場で参加者のゴールがどのようなものかを考えた上で、時間をかけて準備を行うことを学びました。 部長が就任してからの2~3年は、私たちが目指す看護師像を常に口にしてみんなに伝えてきましたが、どうやって自分の言葉にして伝えていくかが自分自身の課題でした。この研修で認識が変わり、組織の在り方などリーダーが示す際にはファシリテーションスキルを活かし看護を伝えると同時にみんなで語り合うことが重要だと気付きました。
横山:
 ファシリテーションの 「みんなが主役」という考え方が印象的でした。 司会を中心にみんなで考えて意見を出し、そこから相力互作用が生まれて気付きができていくという 一 連の流れは、 これからの時代に必要な力なのだと感じています。 トップダウンで言われたことをやるのではなく 「自ら考えて他者を認めて」 という考え方にとても共感し、それまでのリーダーシップ像を変換するきっかけとなりました。

院内改革に向けワークショップでの学びを活かした3つの実践

❶ファーストステップで師長クラスを対象とした研修

大内:
 研修を受けて衝撃を受けた私たちは、院内でも広めたいと考え、看護部の師長クラスを対象にした研修を開催しました。私たちが考えるリーダーのあり方を伝えることを目的とし、対話を通してみんなが元気になり、組織やリーダーのあり方を再考していくことをゴールとしました。 研修を行ったところ、私たちが初めに研修を受けた時と同じく、ファシリテーションはみんなを主役にすることや自ら考えて他者を認めるということなど、今までと考え方が180度転換した参加者が多くいました。

❷対話型リーダーシップによる業務改善

横山:
 2回目の研修ではさらに院内で広めようと多職種にも呼びかけたところ、 彼らも話し合いができてないことを課題に感じており、 会議や委員会の場でみんながもっと意見を言えるように進めたいという思いを持っていたことがわかりました。

 長く課題となっていた、 患者さんのケアが必要なところに看護師が配置される勤務時間になっていない現状について、 ファシリテーションで解決したいと考えました。 多様な世代がお互いにカバーし合い、 勤務が成り立っている現状で、 一 人ひとりが長く働き続け、 患者さんに私たちの看護を提供するためにはどうしたらいいかと問題提起し、 みんなの意見を聞く場を設けました。 コロナ禍でコミュ ニケーションの機会が減り、 相互理解が不十分だった点を考慮し、 常勤 ・ パートすべての看護師を対象にしたところ、 これまでになかった試みに参加率は90%を超えました。 参加者から 「みんなの意見を聞く機会をつくってくれてよかった」 という感想が寄せられ、ファシリテーションの効果を感じています。また、 参加者の1人が 「この仕事が好きだから働き続けられている」 と発言したことをきっかけに、 他の参加者からそこが原点として勤務時間について考える話に進めていけたことは、 私たちの手で対話の場づくりが成功したと実感しました。
大内:
 
自分たちが納得できるものにするためなら行動変容できる、 という思考になってほしいという期待もあり、 ファシリテーションで大切な 「待つこと」 を実行しています。 これも研修で学んだことの1つで、 期日に間に合わないからと答えを急がせるのではなく、 信頼関係があるからこそ私たちも納得してスタッフの奮闘を見守っています。

 この研修でスタッフに考えてもらったり、 一緒に問題解決に向かうことで、 部長が考えるリーダー像にもつながったと思います。

❸新入職員研修でのファシリテーション

中川:
 院内でのファシリテーション研修の幅や対象者をさらに充実させる必要があると考え、 今年度は初めて新入職者も対象に含めることにしました。 4月に全職種の新人職員を対象にした研修を実施した際、 話しやすい場づくりを目的に、 師長や院長も参加して新入職員みんなで自己紹介ゲームをやったところとても盛り上がりました。 こうした場でもファシリテーションのスキルを活用できることを実感していて、 研修後は職員が元気になり、 現場が明るくなったのも実感しました。
※自己紹介ゲーム
地元を離れ不安と期待が入り混じる初出勤日に病院長 ・ 看護師長 ・ 部門長などが参加するなか、 中川部長自らファシリテーターとなってカードを使い1時間程度自己紹介を行った。

課題解決できなかったことが変化に繋がる

横山:
 業務改善の研修を通して、 「わからない」 といえなかったスタッフが 「わからない」と言えたことは大きな成長だと思いました。変わるきっかけをつかめずにいる人たちが変わろうとする姿が見えたことは嬉しかったです。
大内:
 一方、 問いが決まっているからそこに誘導されてしまう感覚を持ち、 目的の達成にならないのではないかと考え、 研修中もずっとモヤモヤしていた参加者もいて、 関わり方の難しさも感じました。 全員がこの研修を受け入れられるわけではないと認識した上で、一 人ひとりにどのようなアプローチが適切なのかが新たな課題となりました。
今後は研修を実施したことに満足せず、その効果を持続 ・ 継続させるPDCAサイクルをまわしていくことが課題だと感じています。 せっかく時間を使ってみんなが考えて発言し対話の場を築いたので、 開催して満足するのではなく的確なフォローで組織づくりや人材育成へとつないでいきたいですね。

チーム力をもっと高めたい看護部にこそ勧めたいファシリテーション

中川:
 一方的にこちらから言うだけではなく相手のことにも耳を傾け、 さまざまな考えを聞き入れられるようなファシリテーション型リーダーこそが今の看護の現場に求められているリーダーではないかと考えます。日々の業務に忙しく走り回り、 チームがバラバラになってしまっていると感じているのであれば、 看護管理者がファシリテーション手法を獲得し、 対話の場を広げるリーダーとしてその役割を発揮し、 人材育成や組織づくり、 人間関係の改善へとつなげることで、看護師 一 人ひとりが元気に患者さんと向き合うことができると考えています。

 アルケア株式会社がより良い看護実践のために開催している看護ファシリテーションワークショ ップがなかったらファシリテーションに出会う機会はなかったと考えると、このご縁は必然だったと思い、 これからもファシリテーションを根付かせるための活動を続けていきたいと思います。


アルケア株式会社は、医療介護現場での身体抑制について安全と尊厳の間で揺れ動きながら低減に取り組んでいる看護師の皆さんと共に歩み、サポートしたいと考えています。職員ひとりが抑制を低減したいと思っても、職員全員で同じ気持ちで取り組む必要があります。組織づくりに生かせるファシリテーションを一緒に学んでみませんか?

アルケア株式会社

お問合せ:コールセンター
フリーダイヤル 0120-770-863 土・日・祝日を除く 午前9:00~午後5:00

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