1. ホーム
  2. コラム
  3. 生活が多様化する現代に必要な地域密着型サービス
    地域を繋ぐ「看多機」の役割とは
めぐみが行く! Vol.5

生活が多様化する現代に必要な地域密着型サービス
地域を繋ぐ「看多機」の役割とは

投稿日:2024.04.25

目まぐるしく変化する医療・社会の中で、看護の本質に触れるような、そんなコーナーにしたいと思っています。
休憩室で帰りの電車の中で是非「めぐみが行く」を広げてみてください。

 少子高齢化が進み、家族構成や働き方、地域社会のあり方が変わってきている現在、看護と介護を一体的に提供するサービス「看護小規模多機能型居宅介護」への注目が高まっています。

 今回住み慣れた地域で、誰もが自分らしく生活を営める地域作りを目指し、介護育児難民や孤独死を出さないことを使命に、在宅医療・介護ケアサービス「ゆらりん」を展開されている株式会社リンデン代表取締役の林田菜緒美さんにお話を伺いました。(文中敬称略)

林田菜緒美 さん

30代で看護師資格を取得後、病院勤務を経て2011年に株式会社リンデンを設立。
医療的ケアが必要な方を中心に、地域の“あったらいいな”の想いを形にするなかで、看多機などを展開し、事業を拡大。
0歳から100歳までがその人らしく生きていくための地域共生社会の実現を目指して活動中。2024年には、健全な社会作りと国民生活の質の向上に貢献した人を表彰する「ヘルシー・ソサエティ賞」の医療・看護・介護従事者部門を受賞する。

自宅介護を支える強い味方に

村松:
 看護小規模多機能型居宅介護 (以下看多機) の立ち上げには、 どのような経緯があったのでしょうか?
林田:
 まず2011年に訪問看護ステーションを立ち上げたのですが、そこでの経験が大きなきっかけになりました。当時は、呼吸器をつけた方や吸引が必要な患者さんの場合、入院かご家族が頑張るしか選択肢がないような状況で、中には身内のお葬式にも行けない、ご自身も治療が必要だけど自分のことは後回しにせざるを得ない、そういう方をたくさん見てきました。そこで、高度な医療的ケアが必要な方でも昼間から利用ができ、夜も宿泊ができる仕組みが作れないかと考えていたときに複合型サービスが始まることを知り、川崎市では初となる看多機(現在の 「ナーシングホームゆらりん」)を立ち上げました。
村松:
 看多機の魅力は何でしょうか?
林田:
 自由にサービスを組み合わせられるためケアプランの調整がしやすく、 ご家族の負担も減らせるので、 看護度が高くても退院してから在宅で過ごすハードルが低くなることです。 人工呼吸器を付けた奥様をご自宅で介護されていた大学教授の方は、 仕事も大切にしたいという願いを叶え、 週1回は教壇に立たれていました。 ひとも暮らしや生き方も多様化している今、 本人や家族が“どう生きたいか”に寄り添えることが 一番の魅力だと思います。

 看多機では看取りも可能です。 看護・介護支援施設はたくさんありますが、 既存のサービスではすくい上げられないところを拾い上げられるのが看多機ではないかと考えます。自分の経験からも言えることですが、 病院や訪問看護では点になりがちだった支援を、線で結べる役割を担っている点も看多機の良いところではないでしょうか。 家族の相談ができる、 ふらっと立ち寄れる場所があることが、 やはり訪問だけの事業所とは違うと感じます。 また、 時間の縛りがない包括料金というシステムも特徴的ですね。
4つのサービス体系と対象者
自由にサービスを組み合わせて看多機を利用



みんなで見守れる地域共生社会を目指して

村松:
 サテライト型 「ゆらりん家」 では、毎週日曜を地域開放日とし、 手作り弁当の販売や健康支援のイベントなどが行われていまいますね。 また、 こども食堂の運営などもされていますが、地域を通してどのようなことに力を入れて活動をしていきたいですか?
林田:
 地域開放では高齢者の方の交流が多くありますが、 まず、 元気なときから知り合うことがすごく大事。 早く知り合うことで介護予防や重症化を防ぐ見守り役も果たせますし、 馴染みの場所であればいざ要介護者になっても抵抗なく通いやすい。 地域にとっては、 障害のある高齢者や子供がいる施設が近くにあると知っているだけでも財産ではないでしょうか。 元気なときからお互いを認識していることで、 介入が必要になったときの安心感が違うと思います。

 私が拠点とする岡上 (川崎市) は飛び地で不便な地域のため、 最初は重症度が高い方が通いや泊まりができる施設が必要だと思い看多機を開設しましたが、 次第に障害の重症度に関係なく、 認知症の方や高齢者、 地域に住むあらゆる層に対して誰でも来ていいよ”という開かれた場所が地域にあることが大切だと実感するようになりました。 「ゆらりん」 というコミュニティを通して人と地域が繋がることで、 安心してそこで生活できる環境を作りたいと思っています。 そして地域と人を繋げながら、 この仕事への理解や興味を育てていきたい。

 まずは目の前のこと、 私の手の届く範囲のことでできることをしていきながら継続していく。 必要としてくれている方たちを思うめと、 今ある力を振り絞って継続することがなにより大切だと思っています。 看多機を始めたい訪問看護師の見学を受け入れたり、 相談相手になったりして、 今後を担う若手育成のお手伝いもできたらと考えています。



今回の取材先

ゆらりん
2011年に、訪問看護ステーション「ゆらりん」を開設。
2013年に「ナーシングホーム岡上」(現・ナーシングホームゆらりん) を開設。
その半年後に、ヘルパーステーションと居宅介護支援を併設し、2016年に医療的ケア児の通所施設「KIDSゆらりん」を新設。
2018年にはサテライト型「ゆらりん家」をスタート。サービスの幅が広がり事業も拡大。


村松 恵
看護師歴26年。小児看護に携わる中で皮膚・排泄ケア認定看護師となり、小児専門病院で15年の看護経験。その後在宅にフィールドを移し、小児から高齢者まで幅広い経験を持つ。
私生活では医療的ケア児(小学5年)の母でもある。新潟県十日町市出身。
「めぐみが行く」では、知りたいこと、見たい場所、取材して欲しい人など募集しています。
editor@medi-banx.com まで、メールでご意見・ご感想をお寄せください。

このコンテンツをご覧いただくにはログインが必要です。

会員登録(無料)がお済みでない方は、新規会員登録をお願いします。



他の方が見ているコラム