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教えて 吉田先生! 【知っておきたい!高齢者の栄養管理 サルコペニア・フレイル予防】

最終回 サルコペニア、フレイル、ロコモティブ症候群…、その違いって?

投稿日:2024.05.07

~ロコモティブ症候群の生い立ち編~

サルコペニア、フレイル、ロコモティブ症候群、似ているようで、ビミョーに違う3つの病態。

最終回は、ロコモティブ症候群にまつわる情報についてお伝えします!
ちゅうざん病院 副院長 吉田 貞夫先生

1.ロコモティブ症候群は純国産

 2007年に日本整形外科学会は、「人間は運動器に支えられて生きている。運動器の健康には、医学的評価と対策が重要であるということを日々意識してほしい」というメッセージを込め、ロコモティブ症候群という概念を提唱しました1)。したがって、ロコモティブ症候群は日本発、純国産の概念で、1980年代に提唱されたサルコペニア、2001年に提唱されたフレイルよりも新しい概念となります(図)。

 当時、ロコモティブ症候群は「加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗鬆症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態を表す」と位置付けられました1)。

 現在、日本整形外科学会のホームページには、“運動器の障害のために立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態を「ロコモティブシンドローム(ロコモ、または運動器症候群)」といいます”と定義が記載されています2)。
図: サルコペニア、フレイル、ロコモティブ症候群の提唱者と提唱年代


2.サルコペニア+骨格・関節の障害 ≒ ロコモティブ症候群?

 ロコモティブ症候群は、運動器全般の障害を含む概念です。骨格筋量の減少を基本としたサルコペニアのみならず、骨格や関節の障害も含まれます。

 ロコモティブ症候群が提唱された背景には、内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性などによって、脳卒中や心筋伷塞などの原因となるメタ ボリック症候群という概念が社会に広く知れ渡ったことがあります。運動器の障害によって、高齢者のADLやQOLが著しく障害されること をもっと広く認識してもらおうというコンセプトがあったそうです。

 転倒・骨折は、我が国の高齢者が要介護となる原因の第3位で、全体の約14%を占めています。関節リウマチなどの関節疾患も全体の10%ほどを占め、合わせると約24%となり、認知症の約17%、脳血管障害の約16%を上まわります4)。男女別に見てみると、女性では、閉経後の骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折、変形性腰椎症、大腿骨頸部骨折などをはじめとした運動器疾患が3割近くを占めます。当時、日本整形外科学会は、介護予防のためには「男性はメタボに気をつけて、女性はロコモに気をつけよう」と唱えました1)。


3.サルコペニ ア 、フレイル 、ロコモティブ症候群 、いずれも栄養が大切

 骨粗鬆症の進行と骨格筋量の減少を防ぐには、特にたんぱく質を中心とした栄養を不足なく摂取すること、ビタミンDの欠乏を防ぐことが大切です。ほかにも魚の油に多く含まれるオメガ3系脂肪酸 には炎症を抑制する働きがあります。ビタミンC、Eなどは、体内に発生する過酸化水素などの酸化ストレスを取り除く働きがあり、これらは運動器の健康を保つことにつながります。

 要介護の発生をできるだけ予防し、患者さんが元気な生活を維持できるよう、日常の食事と栄養を見直していきたいですね。

吉田先生 からのメッセージ

今回の連載、楽しんでいただけたでしょうか?また何かの機会に登場させていただけるのを、楽しみにしております。

参考文献 
1)日本整形外科学会.もっと知ろう!「ロコモティブシンドローム」、2011年.
https://www.joa.or.jp/media/comment/locomo_more.html(2023年11月現在)
2)日本整形外科学会.ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、2023年.
https://www.joa.or.jp/public/locomo/(2023年11月現在)
3)Nakamura K. J Orthop Sci.13(1):1-2,2008.
4)厚生労働省.2022(令和4)年国民生活基礎調査. 2023年

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