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教えて 吉田先生! 【知っておきたい!高齢者の栄養管理 サルコペニア・フレイル予防】

第2回 GLIM基準を使ってみよう!

投稿日:2022.11.28

前回は、国際標準の低栄養診断GLIM(グリム)基準の概要について紹介しました。

今回は、実際にGLIM基準による診断を行うプロセスについて解説したいと思います。

①まずは「現症」つまり体の状態を観察・評価する

 GLIM基準による低栄養診断1)の第1段階は「現症」つまり、体重やBMI、筋肉量の減少がないか体の状態を観察・評価することから始まります(図1)。体重は以前から、栄養状態を評価するための必須項目といわれてきました。近年では低栄養によりサルコペニアが進行することに配慮し、さらに筋肉量の評価も重要だと考えられるようになりました。

 GLIM基準では現在の体重やBMIが、基準より低いかどうかも評価対象となりますが、冒頭に6か月以内に体重減少があったかどうかが記載されています。例えば体重84kg、BMIが29kg/m2のやや肥満ぎみの人でも、1か月に体重が10kg(減少率12%)も減ったとしたら低栄養の可能性があると考えられます。

 BMI低下の基準は、アジア人のカットオフ値が示されていて、70歳未満と70歳以上でもカットオフ値が異なります。

 筋肉量減少についてはおそらくBIA法(生体電気インピーダンス法)で測定を行っている施設が多いと思いますので、図にはアジア人のBIA法によるSMI(骨格筋量指数)のカットオフ値を記載しました。DXA法(二重エネルギーエックス線吸収法)を使用している施設では男性7.0kg/m2未満、女性5.4kg/m2未満の場合、筋肉量減少と評価されます。

②続いて低栄養の「原因(病因)」を探る

 体重や筋肉量が減少したのは、おそらく何か原因があったはずです。第2段階はその「原因(病因)」の評価です。低栄養の原因はまず栄養素の摂取不足が考えられます。食事摂取量減少、消化吸収能が低下するような疾患がないかを評価します。また、エネルギー代謝が亢進し、相対的に栄養素が不足し低栄養になるケースがあります。特に急性疾患、外傷による侵襲や、心不全、呼吸器疾患、がんなどによる慢性の炎症がある場合です。

 このように「現症」と「病因」でそれぞれ1項目以上該当した場合に、低栄養と診断されます。

 「な~んだ、それだけ?」という声が聞こえそうですね。そう!GLIM基準による低栄養診断は意外とシンプルなのです。

③さらに低栄養の「重症度」を診断する

 低栄養と診断されたら続いて、低栄養の重症度も診断します。重症度の診断には現症の3項目(体重減少、低BMI、筋肉量減少)を使用します。筋肉量の重度減少は、SMIがカットオフ値に比較して著しく低い場合に該当します。ただ、アジア人でどの程度減少したら重度に該当するかのコンセンサスが示されていないので、現時点では各自で判断するしかありません。重度の基準の3項目中1項目以上該当した場合、重度低栄養と診断されます。


症例で練習してみましょう

Aさん、69歳男性
診断:消化管間質腫瘍(GIST)、多発肝転移、腰椎圧迫骨折
身長:166.0cm 体重:45.6kg BMI:16.5kg/m2
BIA法で測定したSMIは5.3kg/m2
胃全摘術後のため、腹部膨満感がある
 Aさんは、上記の診断で入院しました。現症では低BMI、筋肉量減少の2項目に該当します。病因では、胃全摘術後で腹部膨満感があるため、消化吸収障害、慢性的な消化器症状に該当します。腫瘍の治療中であることから、炎症をともなう慢性疾患にも該当します。病因でも2項目に該当するので、Aさんは低栄養と診断されます。

 続いて重症度の診断です。BMIは16.5kg/m2のため、重症に該当します。SMIは5.3㎏/m2で、カットオフ値7.0kg/m2と比較するとかなり低値だと思われますので、重症としていいのではないでしょうか?重症の2項目に該当したので、Aさんは重症の低栄養と診断されました。

ぜひみなさんも、GLIM基準を試してみてください。海外では、GLIMの診断を簡便に行えるアプリも配布されているようですが、少し工夫すれば、表計算ソフトウェアや電子カルテ内でも診断のひな形を組むことができそうですよね。 次回はGLIMの診断と筋肉量の評価について解説したいと思います。
参考文献 
1)Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, Gonzalez MC, Fukushima R, HigashiguchiT, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition ‒ A consensus report from the global
clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1‒9.

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