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「口腔ケア」という用語・定義について考えてみる第1回

「口腔ケア」という用語・定義について考えてみる。 第1回

「口腔ケア」という用語は、従来から看護の世界で使用されてきた日本独自の用語であるそうです。



日本口腔ケア学会は1994年に、「口腔ケア」を“口腔の疾病予防、健康保持増進、リハビリ
テーションにより、QOLの向上を目指した科学であり技術である”と定義しました。



広義では、フッ素塗布から、ブラッシング、うがい、清拭、義歯の保管や手入れ、摂食・嚥下リハビリテーション、食介護、マッサージなど幅広く、狭義では、ブラッシング、うがい、清拭、義歯の保管や手入れ、舌苔や口腔乾燥への対応などを行うものとしています。



しかしながら、この「口腔ケア」という用語を使用して会話が行われると、ほとんど間違いなく概念的かつ意味論的混乱に陥ってしまうことになります。



同僚や他職種間で口腔ケアについて話すとき、「それ(口腔ケア)」が存在し、その影響が重要であるであるということについては意見が一致しても、「それ(口腔ケア)」が何かについては全く異なった考え方をしていることに気づくことでしょう。



例えば、職種の違いによってもそれぞれの目的と内容が混同しており、「口腔ケア」を明確に説明できていないのが現状のようです。



その理由としては、保健・医療・福祉の共通言語である「ケア」という用語によって、どの分野にも抵抗なく受け入れられ、それぞれの現場での症例に合わせて使い分けられていたという事情が考えられます。



また、「口腔ケア」の手段の中に“摂食・嚥下リハビリテーション”が含まれていることも違和感を覚えてしまいます。



本来、リハビリテーションは、権利・名誉・尊厳の回復といった“全人間的復権”を意味し、対象者の社会統合の実現をめざすあらゆる措置を含むものであり、「機能回復訓練」や「口腔ケア」は“リハビリテーション”の一部に含まれるべきものなのです。



“口腔ケア”と“リハビリテーション”の考え方の混同を再整理するとともに、 “目的のレイヤー(階層)”を明確にして、例えば、「口腔ケア」→「口腔環境改善」→「栄養確保」→「健康保持増進」→「QOLの向上」という考え方で定義を再構築してみるのもひとつかもしれません。



早急に理にかなう定義づけ、あるいは「口腔ケア」という用語の見直しが望まれるところですが、今のところ、狭義での内容は「口腔清掃」、広義ではそれに「歯科治療ならびに口腔機能訓練」を加えるのが一般的な捉え方であると考えられます。



しかしながら、そこには未だ統一された定義はなく、その捉え方も職種によって異なる場合があります。



現状における各分野から提案されている口腔ケアの定義を整理すると、「口腔疾患および気道感染・肺炎に対する予防を目的とする口腔衛生管理や口腔保健指導を中心とする狭義の口腔ケア」そして、「口腔疾患に対する治療と口腔機能障害に対する口腔機能訓練までを含む広義の口腔ケア」という2つの枠組みで捉えることができそうです。

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