1. ホーム
  2. コラム
  3. 連載コラム「ナースプラクティショナーまでの道 ~看護師人生中間地点~」 第6回
ナースプラクティショナーまでの道第6回

連載コラム「ナースプラクティショナーまでの道 ~看護師人生中間地点~」 第6回

投稿日:2011.11.14

第6回:再び歯を食いしばる

現在、糖尿病看護認定看護師は全国で322名にまで増えているが、私の受験当時は全国でわずか15名だった。勇気を出して隣県で活躍されていた面識のないIさんに電話し、受験対策や研修学校の様子、修了後の活動について質問した。



「一生の間にこれ以上勉強をすることはないと思って覚悟して進学したほうがいい、それくらい勉強することになるから」とアドバイスをいただいた。



看護学生時代に勉強嫌いだった私に耐えられるだろうかと心配したが、合格する可能性は低いだろうと思う一方で、当時糖尿病患者Gさんへのケアに行き詰っており、万が一門戸が開けば糖尿病について学べ、ネットワーク作りの機会になるので行くべきだと考えた。



合格後、長男の登校拒否もあったが(詳細は連載第5回)、バタバタと調整をして東京に引っ越した日、自身の勉強のためとはいえ子供を置いてきたことの罪悪感と寂しさと不安から、狭い部屋で涙が出てしまった。



このとき、「もう引き返せない、何としてでも研修を終えなくては」と覚悟をした。6ヶ月の学生生活は、I先輩が言う通り勉強・ディスカッション、試験・レポートの毎日だったが何とか研修を修了し、臨床に戻った。



研修中以上に臨床に戻ってからは歯を食いしばる経験が続いた。3交代勤務をしながらも、研修で学んだことを少しでも生かしたいと思い、自身の専門活動は夜勤入りや夜勤明けの時間外に外来で療養指導をしたり、周術期の血糖管理を行っていた。



私自身は一生懸命だったが、このような新たな活動を快く思わない職員もいた。1年経過する頃には仕事も増えて、看護部長や同僚が私の体調を心配してくれるようになり、私自身もこのままでは体力がもたないと不安に思い始めた。



ある日、勇気を出して院内を横断的に活動させてほしい旨の打診を副院長にしたところ、「前例がないのでよく思わない人もいるかもしれない。そうなるとあなた自身が横断的に活動しにくくなる。



他のスタッフから『中山さんの業務をどうにかしたほうがいい』と声が上がるまで、もう少しこのまま様子をみたほうがいいと思う」とアドバイスされた。



少し残念な気持ちと、「子供のためにも倒れてなるものか、でも、ニーズがある限り活動は続けよう、きっと誰かが声を上げてくれるはず」と再び歯を食いしばる覚悟をした。




その後しばらくして医師から「毎日日勤帯にいてくれないと血糖管理が困る、フリーにしてやってほしい」と看護部長に進言してくれたことで、晴れてフリーで活動できることになった。



その頃には、糖尿病患者Gさんが更に病状が進行してしまい、再度合併症の医療ができる病院に紹介したが、10日あまりで自己退院してきた。



Gさんと家族から「専門的な医療は望まない、ここで最期まで診てほしい」と言われ、主治医からも「彼も家族もそこまで言ってるし、中山さんがみてもいいのなら、ここで診てもいいよ」と最終決断を求められた。




高度な医療が望めるこの日本で、このままGさんの治療を続けていいのだろうか?私の関わりが悪いからこんなに進行したのではないのか?悩みに悩んだ結果、Gさんを最期までみる覚悟を決めた。このときも奥歯を噛み締めながら決断した。



前後して、大学病院から着任されたばかりのJ医師に階段の上から呼び止められ、振り返った瞬間「ちょっと、そこのあなた、看護師のくせにインスリン量の変更をするなんて!」とものすごい形相で怒鳴られた。


もちろん勝手にしたわけではなく、上位医師から依頼をされてのことだったが、こんなJ医師ともうまく恊働をしないと私の横断的活動は成り立たない。



J医師からの嫌がらせがしばらく続いたが歯を食いしばり続けた。そんなJ医師も私の活動に徐々に理解を示すようになり、ようやく恊働でき始めた頃退職となった。



「一緒に仕事をしてみて、こんなナースと一緒に仕事をしたいと思った。これから中山さんにどんな道が開けるのかわからないけど応援してるから。」と言葉を残してくれた。いろんなことがあったけど、すべて今の私の糧となっている。


2年前に奥歯の違和感で歯科受診した折に、「ずいぶん歯を食いしばってこられましたね。奥歯が相当すり減っていますよ。」と歯科医から説明を受け、診察台の上で胸が熱くなった。大きな決断をしたことや、とてもつらいときに歯を食いしばってきたことが走馬灯のように思い出された。



最初に就職した病院の副看護部長(連載第1回)さんのおかげだ。「医療現場はいつも真剣勝負です。歯を食いしばる覚悟を教えていただいてありがとうございました。」

⇒バックナンバー

このコンテンツをご覧いただくにはログインが必要です。

会員登録(無料)がお済みでない方は、新規会員登録をお願いします。



他の方が見ているコラム