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看護・医療 しゃべり場 インタビュー編

認知症ケア投稿日時-(2020-04-18)ナースマガジン

今回は、本誌連載「東北から発信! A-CNDnet」の第1回でご紹介した、東京情報大学看護学部看護学科教授の藤井博英先生、助教の大山一志先生をお訪ねしました。
地域における認知症高齢者への適切なケアをめぐり、看護の眼が届きづらい警察では、何が求められているのでしょうか?
(本文中敬称略・編集部まとめ)


現場の警察官も不安でいっぱい

大山:過去に、警察官が介入したにもかかわらず、認知症高齢者が保護されずに死亡(2014年)したり、公園に置き去り(2015年)にされたりする事件が都内で起きました。これをきっかけに、警察官の認知症サポーター養成講座受講が警視庁では義務化されました。
しかし受講したからと言って現実問題への対処法が即座に実践できるわけではなく、看護・介護の専門外である警察官が認知症高齢者と対応せざるを得ないことがこれらの事故を生み出しているのではないかと考え、警察における認知症高齢者対応の実態調査・研究に取り組もうと考えたのです。
(平成28年度科学研究費助成事業挑戦的萌芽研究 課題番号:16K15967)

まずその実情を把握するため、北東北の警察署を中心に協力依頼をしました。唯一、青森県警本部がインタビューを引き受けて下さり、生活安全課・地域課・刑事課警務課・交通課の各代表から、それぞれの部署での現状をうかがうことができました。

生活安全課
「最も対応に迫られる部署です。身元不明で保護されると身元が判明するまで、認知症高齢者に必要な生活環境がない警察内で保護することになります。見守りや介護、食事や排泄の介助、時にはオムツ交換もしなければなりません。
ところが、声のかけ方一つとっても慣れていませんし、実践的な勉強をしたこともほとんどありません。さらに転倒・骨折などが起きれば警察の責任問題にもなります。」

刑事課
「刑事課は、死亡に対する事件性の有無を判断する部署です。高齢者夫婦のみの世帯でどちらかが何らかの理由で自宅で死亡しても、残された方が認知症を発症していると、亡くなったことに気づかず遺体と共に暮らしていたりします。
事情を聴こうにも聴取ができず、事件性がないと思われても遺体解剖に回さざるを得ないことがあります。」

交通課
「近年、運転免許証返納に関連して認知症高齢者との関わりが多くなりました。
道路交通法が改正され、75歳以上の更新時には認知機能テストに合格しないと免許取り消しになりますが、テストに不合格でも自分ではしっかりしていると思っている人が多く、なぜ取り上げられないといけないんだと考えている人も少なくありません。これを納得させるのが難しいのです。地方では車がないと生活に影響が出ることも多いので、その代わりになる仕組みが整っていない状況では、なおのこと苦労します。」

藤井:警察官同士も組織が縦割りで、情報の伝達や共有が行われにくいようです。閉鎖的な体質もあり、困っているはずなのに上層部ほど「困った」と言わないんですよ。
インタビュー時の訊き方を「何に困っていますか」ではなく「どのようなニーズがありますか?」としたら、ちょっと反応が違うのかもしれませんね(笑)

大山:警察官から看護専門職者へのニーズは以下のようなことでした。

認知症高齢者への対応方法についての知識の提供
看護職との相談・情報交換体制の整備
認知症に伴い生じるトラブルの再発防止支援
認知症重症度判断ツールの提供

これらの現状を踏まえ、警察と看護の連携を構築していくことが急務だと考えます。

必要なのは現場に則した柔軟性

藤井:1回90分の座学である認知症サポーター養成講座では、これら警察官からのニーズに応えきれないでしょう。最近は、新聞や飲料などの定期的な宅配で自宅を訪れる業種が、安否や以前と変わったことがないかの確認などを行っているところもあります。そういう生活の場面で最低限必要な情報こそがサポーター講習には必要なのです。実施した対応への検証(結果に対する評価)も必須です。

だからこそ、そこにはたくさんの症例を経験してきた認知症看護認定看護師(以後、認定看護師)が関わっていくことが必要なのです。

大山:生活安全課は病院看護師や地域包括支援センターとの接点があるのですが、その他の部署はほとんどありません。
現場のニーズが明らかになり、その対応を専門とする認定看護師がすでにいるのですから、調査協力いただいた後、認定看護師による実践的な研修会の開催を提案してみました。しかし、開催には至りませんでした。

藤井:そこまで守りが固いなら、認定看護師は講師だけでなく、自ら企画して出張講義を行なってはどうでしょうか。警察には会場を借りるだけ。入り口にテントを張って会場にすれば、警察を訪れた一般の人にもアピールできて更に効果的かもしれない。段取りや設営はこちらで準備し何度でも開催する、そういう「攻め」の活動を展開してはどうだろうか。常々言ってきたことですが、病院内をベースに動いていると思考の柔軟性が徐々に失われがちです。現場に則した柔軟性を意識して活動する、外に向けたフットワークが大切になってくると思います。

大山:認知症高齢者のサポートは、今や警察内だけ、看護職だけでは解決できない社会的な課題です。認知症看護認定看護師は、その専門性を求められる場に提供する責務があると思います。警察も含め、日常生活で接する様々な職種に正しい認知症ケアの知識や対応方法を伝え、認知症高齢者が住み慣れた場所で暮らしていくための安全と安心を守る要として活躍してほしいですね。

(2019年5月27日取材)

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