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聴きある記

病院歯科介護研究会第23回学術講演会 多職種で行う口腔管理がもたらす好循環~歯科衛生士の役割~

投稿日:2022.08.02

2019年12月の「脳卒中・循環器病対策基本法」施行を受け、脳卒中発症後の機能障害を最小限にとどめることを目指して多職種による地域連携への取り組みが始まっている。その中で歯科の担う役割について、当日のシンポジウム「多職種から見た口腔管理の課題」より、一部講演要旨を紹介する

会 期:2021年11月7日(日)
会 場:Web開催
テーマ:「多職種ではじめる脳卒中地域連携」

社会医療法人祥和会脳神経センター大田記念病院
歯科医長 松永 一幸 先生  歯科衛生士 吉田 泰子 先生

歯科による早期口腔 衛生管理の効果

 当院は脳卒中、脳血管疾患の専門病院で、届出病床数213床(うちSCU21床)、一般病床が90床あります。2018年に回復期リハビリ病床を50床新設し、急性期病院としての機能も持ちます。地方病院でありながら年間1千人以上もの脳卒中患者を診ており、また院内に歯科があるのは国立循環器病研究センターと当院のみで、医科歯科連携に対する意識の高さも特徴です。

 2012年に常勤の歯科衛生士が入院患者の口腔ケアを行うことになり、2013年地域歯科医院による訪問歯科診療開始、2014年には常勤歯科衛生士2名体制となりました。2015年6月に歯科開設となり、現在、常勤・非常勤を含め歯科医師4名、常勤歯科衛
生士が5名所属しています。

 急性期脳卒中患者に対して早期の口腔衛生管理を行うことは誤嚥性肺炎の抑制や発熱減少に有用とされ、また早期の摂食嚥下訓練や経口栄養摂取が予後改善に有用との報告もあります。早期歯科介入により口腔感染と経口栄養摂取の包括的な管理ができるため、感染症の合併を抑制する効果が期待できます。

 急性期脳卒中患者を2群に分けて退院時点の調査項目との関連を調べたところ、入院から歯科介入までの日数が7日以内の群は8日以上の群に比べて在院日数が約7日、発熱日数が約4日と有意に短縮しており、入院費用は約60万円減少していました。歯科早期介入により口腔感染と肺炎発症が抑制され、発熱日数が短縮します。その結果、早期リハビリテーションが可能となり、在院日数短縮、入院費減少、身体機能低下抑制につながります(図1) 。

病院でも地域でも多職種連携による口腔管理体制を

 入院早期から多職種連携による口腔管理体制を構築するため、以下の3項目の改善を目指しました。

①看護師の口腔ケア強化のため口腔アセスメントと口腔ケアプランの導入。

②より多くの患者に早期介入するため、歯科介入手順の簡略化と看護師からの依頼による歯科介入体制の構築(図2) 。

③多職種チームへ積極的に歯科医師、歯科衛生士が参加し口腔内情報を共有。
 口腔アセスメントは口唇、舌、歯肉・粘膜などの8項目を3段階で評価するオーラルヘルスアセスメントツール(OHAT)を使用しています。OHATは口腔内所見を点数で評価できるため口腔ケアの標準化ができ、共通言語として多職種での情報共有が可能となりました。OHAT導入後は、入院から歯科介入までの日数は約4日、発熱日数は約3日、在院日数は約9日短縮、入院費用は約40万円減少しました。

 脳卒中地域連携では連携パスによる急性期から維持期までのシームレスな医療支援体制構築が求められています。病院歯科での連携強化、、歯科以外の職種が口腔評価ルールを用いて歯科依頼する体制を地域でも構築していく必要があります。多職種で行う口腔管理を地域で継続することにより、脳卒中の再発予防につながっていくと考えます。

(ニュートリション・アルファ 西谷誠)

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