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教えてっ! 退院支援の5つのこと第14回

教えてっ!退院支援の5つのことシリーズ第14回

投稿日:2020.04.15

教えてっ!退院支援の5つのこと 第14回

 吉川 美奈子 さん
 隣 未来 さん
 清水 直美 さん
 
 独立行政法人 国立病院機構 村山医療センター
整形外科・脊髄損傷外科の専門機関である、村山医療センター。患者さんが退院後安心して生活ができるよう、退院前カンファレンスに力を入れています。今回は、退院調整に携わる看護師3名にお話を伺いました。

専門病院だからできるオーダーメイドな退院支援

当院は脊髄損傷も含めた、骨・運動器疾患に特化した施設です。退院後の生活環境の調整が必要な患者さんが多く、積極的な退院前訪問・退院後訪問を行っています。
認知症独居や高齢者夫婦などのケースでは、院内外の専門職との連携が欠かせません。院内では、地域医療連携室のMSW(メディカル・ソーシャル・ワーカー)とやりとりし、地域での支援全般について相談しています。席が近いこともあり、少しの相談でもいつのまにかケア会議に発展していることもよくあります。
院外では、地域のケアマネジャーさんと協働することが多いです。退院前から患者さんの情報を共有し、必要があればPT(理学療法士)・OT(作業療法士)も同行、福祉用具の使い方などもお話しします。
また、当院に小児科は無いのですが、脊損や骨折で搬送、入院するお子さんの患者さんもいます。障害の程度によっては、退院後、在籍中の学校に戻れないことも…。その場合、保護者はもちろん、特別支援学校・学級の担当職員を交えた退院調整を行います。
患者さんには、退院後生活する場の写真提供をお願いしています。室内の段差や浴槽の幅・高さ、手すりの左右などを確認するためで、実際に訪問して計測することもあります。写真の情報を元に、リハビリ室に同じ高さの段差、同じ位置の手すりなど、退院後を模した環境を用意。専門病院だからこそできるオーダーメイドな支援です。
患者さんのおかれた状況は百人百様です。患者さん一人ひとりの症状・障害状況にあわせたリハビリ、地域福祉との連携を行い、スムーズでシームレスな退院調整・退院支援を心がけています。

患者さんの不安に障害の程度は関係ない

退院後の生活に不安を感じる患者さんは少なくありません。
退院調整室に配属された当初、障害の重い方ほど不安が大きいだろうと考えたのですが、今までできていたことが少しでもできなくなることには違いがないのだなと思いました。障害の程度で考えず、患者さん本人の気持ちに寄り添ったケアが必要と感じました。
退院支援・退院調整の役割として、まずは患者さんの病棟に通い、関係性を築くところからはじめます。退院調整の看護師と認識されると、病棟の看護師には言いづらい退院後の希望など話してくれる患者さんも多いです。
これからの人生どう歩んでいきたいか、どこで生活したいかなど、ゆっくり傾聴することを心がけています。
また、担当する患者さんの情報収集は、患者さんに紹介される前、なるべく早い段階からはじめます。担当医やリハビリスタッフ、病棟看護師らからヒアリング、一人の患者さんに関わる医療チームとして情報共有出来た上で、IC(インフォームド・コンセント)に臨みます。そうすることで患者さんの状況への理解が深まり、対面後、スムーズな関係が築きやすいと考えています。

退院支援を行うときの病院との連携

患者さんの中には、「退院後の自分が想像できない」と不安に思う方もいます。医師の呼びかけで、同じような障害を持ちつつ地域で暮らす元患者さんを招く交流会が催されることも。ロールモデルを知っていただくことで、不安が和らぐケースもあります。
また、地域が持つフォーマルな社会資源のみならず、インフォーマルな資源を理解することも大切です。島しょ部から脊損で入院した高齢の患者さんの場合、島内に病院と介護施設が一箇所ずつしかありません。当院側もご家族も地域に戻るのは難しいと判断しました。しかし、患者さん自身ご自宅に戻りたい思いが強く、近所の仲間が面倒みてくれるから大丈夫とおっしゃいます。ICを重ねてもご本人の意志が変わらないので、帰宅のための支援が始まりました。船に車椅子移動の動線を確認、褥瘡をつくらず安全に帰れるよう、付き添う家族の方と幾度もシミュレーションしました。
今、退院後1年半経っているのですが、褥瘡なく生活していると連絡を受けています。実際に地域の方のサポートがあり、皆さんと笑顔で写るご本人の写真を見ることができました。今回のように、インフォーマルなサポートに委ねることも、場合によっては必要と感じます。

退院支援が困難な場合の対応


当院では、地域医療との連携を深めるための支援も行っています。在宅療養者で介護保険利用が困難な方に向けた「レスパイト入院」もその一つです。かかりつけ医などからの申込みで、1〜2週間の保険診療での入院が可能です。ご本人はもちろん、ご家族ががんばりすぎないためにも、利用いただきたいサービスです。昨年に比べ利用者数が倍近く増えており、地域でのニーズを感じています。
また、退院後の体力低下が気になる方には、個別リハビリやアドバイスを行う「短期リハビリテーション」をお薦めしています。在宅療養にうつってからのリハビリ面での不安解消に、役立てていただけます。

地域から 「村山なら大丈夫」と頼られる存在に

骨・運動器疾患に特化した専門的な医療を行う施設として、地域の期待に応えていきたい。
「村山ならなんとかしてくれる」という存在になりたいですね。退院調整専門の看護師として、患者さん一人ひとりに精一杯支援をすることがその一歩になると信じ、日々患者さんと向き合っています。

(2019年11月29日取材編集部まとめ)

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