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学会聴きある記第1回

【学会聴きある記】創傷被覆材をめぐる現況①

投稿日:2015.11.17

第17 回 日本褥瘡学会学術集会
(2015 年8月28・29日 於:仙台)
多彩な企画が繰り広げられた本学術集会のプログラムの中から、創傷治癒のメカニズムと新しい創傷被覆材の使用経験をテーマとした、2 つのランチョンセミナーの要旨を紹介。
ランチョンセミナー1では、初めに仲上豪二朗氏(東京大学大学院医学系研究科老年看護学/創傷看護学分野講師)がハイドロセルラーフォームドレッシング(ハイドロサイト)と従来のドレッシング材との比較研究を報告。
新しい知見として、ハイドロサイトは滲出液の成分変化をもたらし、炎症期の短縮、表皮化の促進、滲出液中のレプチン濃度を上昇させるという三つの面から創傷治癒を促進していることを、動物実験レベルで明らかにした。

以下に紹介するのは、臨床におけるハイドロサイトの創傷治癒促進効果を報告した間宮直子氏の講演要旨である。

臨床での創傷治癒過程におけるハイドロサイトの効果

間宮 直子 氏
(大阪府済生会吹田病院 皮膚・排泄ケア認定看護師)

■ハイドロセルラーフォーム ドレッシング「ハイドロサイト」

症例①
10代女性。拒食症、誤嚥により3カ月間人工呼吸器装着、抜管後リハビリ目的で入院。低栄養で皮膚は脆弱な状態。

▼褥瘡:仙骨部、背部、右腰部、左腸骨部等に6カ所発生。入院時、発生から既に1〜2カ月を経過。
▼処置:創傷被覆材に剥離時の皮膚損傷リスクが少ないハイドロサイトADジェントルを使用。

「適度な湿潤環境を保ち、創面に触れる滲出液中の成分を変化させ、治癒促進を誘導させる。多少の炎症があっても表皮形成を促進させる。これがハイドロサイトの効果だと考えます」

■重症褥瘡患者も地域でみる老人福祉施設との連携

年間111名の褥瘡の持込み患者のうち、死亡退院以外の治癒せずに退院した重症褥瘡患者が28名いたことを報告。重症褥瘡患者を地域で看ていくことの重要性を説明した。
実際に自施設と隣接する特別養護老人ホームに入所した退院患者の褥瘡管理症例を紹介。
特別養護老人ホームでは院外処方箋がきかないため、門前薬局から創傷被覆材の供給ルートを確保。

症例②
90代女性。特別養護老人ホーム入所8年以上経過。おむつ着用あり。日中は車椅子で過ごす。

▼褥瘡:左坐骨結節
▼処置:創傷被覆材にハイドロサイトADジェントルを使用。
①浸軟のチェック(使用しているおむつの種類、交換回数、時間)
②車椅子移乗時のチェック(ずれ・摩擦)
③座位の姿勢のチェック・体圧分散の指導
本症例に限らず、老人福祉施設との連携モデルを確立し、効果的な褥瘡管理の提供と機能的な創傷被覆材の相乗効果で創傷治癒を加速させているとのこと。

「老人ホームの看護師さんも、創傷被覆材を自費購入した入居者の方も、傷が治って喜んでいます。創傷管理をめぐる進化とは、創傷被覆材活用の場が在宅や老人福祉施設まで広がりを見せていることだと思います。
皮膚・排泄ケア認定看護師が、院内外の医療スタッフだけではなく、在宅の患者・家族に創傷管理のケアや指導、創傷被覆材についての説明を行っています。それこそが看護師が行う創傷管理の進化といえるのではないでしょうか」と結んだ。
ランチョンセミナ-1
「創傷管理コンセプト×創傷被覆材におけるEvolution(進化)」より
(共催:スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメント株式会社)
【学会聴きある記】創傷被覆材をめぐる現況①

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