1. ホーム
  2. コラム
  3. 看護・医療 しゃべり場 インタビュー編【 ケアレベルの底上げを 目指すチームリーダーの心得 】
看護・医療しゃべり場

看護・医療 しゃべり場 インタビュー編【 ケアレベルの底上げを 目指すチームリーダーの心得 】

投稿日:2014.05.14

~周囲を巻き込むチーム作りのために~

春は新人ナースの入職や異動など、仕事も人も新たな出会いの時期。新人を含むナースをまとめ、ケアレベルの底上げをはかるために、リーダーとなるナースにはどのような視点が必要なのでしょうか。
今号では、埼玉医科大学病院褥瘡対策管理室をお訪ねし、松岡美木副看護師長にお話を伺いました。
松岡 美木(まつおか・みき)看護師
(埼玉医科大学病院 褥瘡対策管理室褥瘡管理者/皮膚・排泄ケア認定看護師)

1999年、日本看護協会WOC 看護(現:皮膚・排泄ケア)認定看護師認定資格取得。埼玉医科大学病院褥瘡対策管理室、褥瘡管理者となる。
日本褥瘡学会認定師資格取得、FSI認定フスフレーガー資格取得、日本看護協会看護研修学校特定看護師(仮称)養成調査施行事業実施課程修了、看護師特定行為・業務施行事業参加。副看護師長に昇格。
  ※フスフレーガー:足の手入れ・ケアを行う技術者。

研修で自分を見つめ直す

――認定看護師研修では、技術だけでなく、その領域のリーダーとしてナースを束ねてゆくという役割や心構えも学ばれたことと思います。それをどのように活かしてこられたのでしょうか。
研修生の中で一番若かった私にまず突きつけられたのが、「経験が浅い」ということでした。
他の研修生たちは、ナースとして脂の乗った、経験豊かな先輩方。院外で看護研究の発表をしたり、著名な先生方とも親しく、いろいろな経験を積んでから目標を定めて研修を受けに来られた方がほとんどだったのではないでしょうか。

一方私はと言えば、文章は書けないし、患者さんの状態を読み取るアセスメントは、看護経験を重ねてきた人の方が圧倒的に上手で、すぐには追い付けませんでした。
入れ替わりの激しい当院で5年間勤務してきた臨床経験から、そこそこできていると思っていた私でしたが、鼻っ柱をへし折られるという経験をしたのです。
この経験は、この研修を受けなければ無かったことです。それに気づかせてもらったのは、本当によい経験でした。自分ではやっていたつもりでも、傍から見ると不十分なところがたくさんあることに気づかせてもらいましたから。
研修後、再び外科病棟に戻った私は、約7年間、夜勤を含め通常の業務と病棟リーダーの仕事をしていました。
病棟ナースをまとめる立場として意識が変わったことは、自分が所属している病棟の看護ユニットを、客観的にみるようになったことです。
病棟という母体の一員として働きながらも、この母体の中で自分の専門領域が関われる部分は何か、を常に意識して大局的に捉えるようにしています。
例えば、清拭の仕方。患者さんの皮膚にとって良好なケアを提供するにあたり、ナースのスキルに差が出ないようにケアレベルを底上げするには、どうやって介入していけばよいか。そういう視点を持つようになりました。

研修以前は、その母体の中で翻弄される自分がいたのですが、それは客観性が欠けていたのかな、と思うこともあります。
自分の思いをみんなに強制するような関わり方をしていたのでは、うまくいきません。周囲をどのように巻き込んでいくかというマネジメントについて、研修の「看護管理」という枠には、かなり時間が割かれていました。
リーダーシップやコミュニケーションの取り方など、研修で学習したことを繰り返し考えて捉え直すように心がけています。

魅力的なチーム作りで仲間を増やす

――専門性を活かしたケアを提供できるナースを増やすために、周囲のナースたちにどのような働きかけをしたのでしょうか?
ストーマケアに関わっているメンバーを教育し、そのメンバーをコアにして同様のケアをできるナースを増やしていく、という戦略を考えました。
やりたい人にはどんどん入ってもらえるよう看護師長にもお願いし、了承をとりました。

ストーマケアというのは、技術の部分は言葉の説明だけではうまく伝わらないので、私の担当患者さんのケアも見てもらい、ストーマケアというのはこういうことをやるんだな、患者さんにはこういうことを聞くんだな、ということを知ってもらうようにしたのです。
そういう指導を通して、「自分もやってみよう」というナースが増えてくれたら、と思います。

意欲的なナースに仲間に入ってもらうためには、いかに自分のチームが魅力的か、ということが重要になります。
私は意識していなかったのですが、「ここ(褥瘡対策チーム)に入れば楽しく仕事が出来るかもしれないと思ったので、このチームを選びました」と言われたことがあります。

それを機に、傍から見た時の状況雰囲気なども気にするようになりましたね。

仲間が後に続く管理者を

―― 認定看護師の資格を持つ松岡さんの考える「管理者」とは?
今、私がこの病院では一番古い認定看護師なので、私が先頭に立って「認定看護師」という資格をキャリアの一つとして認めてもらう働きかけを、病院側にしなければいけないと思っています。
自分が良いケアを提供したいという気持ちと共に、認定資格は自分のキャリアを積み上げてゆくためのツールと考えるナースもいるかもしれません。
やはり、資格が給与面や勤務の処遇に反映されるということは、重要なのです。院内のクオリティを上げてゆくには、同じ方向を目指す仲間の数がある程度増えないと、母体を動かすことはできません。
仲間を確保するには、そういう報酬上のしくみも整備していく必要があるでしょう。ただ「認定看護師を目指しましょう」、と言うだけでは、なかなか後に続く人は増えないのではないでしょうか。
看護ユニットの長、管理者の考えは、院内の取り組みに大きく影響すると感じます。求められていることに対し、どうやったら自分たちをボトムアップさせていくかの手法を、管理者は率先して示すべきです。

ナースの教育をどう進めるか、医師とどのように連携をとったらうまくいくかといった技術を若いスタッフに教えることこそ、経験を経たナースがやるべき仕事であって、その軸がぶれないようにリーダーシップをとってコントロールしてゆくのが、管理者の役割だと私は思います。

≪松岡さんがご活躍されている病院≫

埼玉医科大学病院
〒350-0451
埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38
※本記事は、ナースの星Q&Aオンライン「認定看護師インタビューキャラバン」(https://www.nurse-star.jp/column/166
)」の取材をもとに、再構成しました。

このコンテンツをご覧いただくにはログインが必要です。

会員登録(無料)がお済みでない方は、新規会員登録をお願いします。



他の方が見ているコラム