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専門家Q&A

胃瘻部周囲の皮膚トラブルについて

ご質問

栄養の漏れが多く、ほとんど栄養注入ができないことから、PEGチューブサイズをどんどん大きくしたところ、瘻孔が広がり、皮膚トラブルが改善しない利用者がいます。現在はPEGチューブサイズを小さくし亜鉛筆軟膏を塗りながら皮膚の改善をまっていますが、どうしても瘻孔がどうしてもとじません。何かいい方法はありますか?

専門家の見解

成人か小児かによって多少変わってきますが、成人と仮定して回答します。
まず、PEGチューブを太くしていったり、外部ストッパーの締め付けを強くすることは逆効果です。
もれの原因として1)胃排泄能の低下や小腸や大腸機能の低下、などよる胃内圧の増加、2)PEGチューブの内部バンパーが胃粘膜に食い込んでしまっているバンパー埋没症候群、3)PEGチューブによる瘻孔への刺激が強くて瘻孔が拡がりやすくなっている、という3点が考えられます。また、4)胃内の部分がバルーンタイプのカテーテルの場合バルーンが先に進んでしまい、幽門を閉塞してしまうBall Valve Syndromeという状態も考えられます。
1)と4)に対しては、PEGチューブからガストログラフィンを注入してX線による透視で胃からの排泄や腸管内の通過の具合を確認するのが確実です。療養環境によっては難しいかもしれませんが、「ほとんど栄養注入ができない」状態であれば消耗する一方なので、行うべきです。原因が分かれば消化管運動機能改善薬の投与や便秘の解消、半固形化製剤への変更で胃の蠕動運動を刺激するといった方法が使えます。
2)を確認するためにはPEGチューブがスムーズに回転するかどうかを見ます。スムーズに回転しない場合は、PEGの造設が可能な病院に速やかに受診させてください。
3)に対してはPEGチューブをできるだけ皮膚に垂直に立て、瘻孔の一カ所に集中的に当たらないようにします。100円ショップなどで販売されている化粧用パフやスポンジに切れ込みを入れて当てると良いといわれています。PEGがチューブ型の場合はボタン型に変更して注しないときには接続チューブを外しておくことも瘻孔への刺激を減らすことになります。また、PEGチューブの材質がポリウレタン製の場合は、シリコン製のものに変更したところ漏れが減ったという報告もあります。一時的に投与を休んで細い径のPEGカテーテルに交換し、瘻孔が縮小したら元のサイズに戻して投与再開という方法や経胃ろう的空腸瘻(PEG-J)への変更もあります。

専門家の見解

栄養の立場からこの問題を考えてみたいと思います。
私は栄養士ですので、創部の局所治療については、当院の消化器外科深沢医長に、望月先生のお答えの通りであると確認しました。加えて、現在の胃瘻を一度抜去して、別の場所に作り直すという方法と、亜鉛華軟膏でなくとも、ワセリンかP軟膏(皮膚保護パウダー+ワセリン)で良いのではないかというご意見を頂きました。

*私は栄養士なので、栄養の立場からこの問題を考えてみたいと思います。

まず、栄養剤の漏れという根本について対応する必要があると思いました。

栄養剤の漏れの原因として
①投与速度が早い②胃内に大量の空気貯留③胃排泄能が低下④便秘による腹圧上昇などの原因があります。

対策法
①投与速度が早い場合、漏れが生じる可能性があるため速度を遅くする必要があります。また低Alb血症や浮腫がある場合には傷が塞がりにくいため投与速度をさらに減じ、高濃度(2kcal/ml)栄養剤などを試してみると良いと思います。
 これらは、クレンメの手動調整ではなく、経腸栄養ポンプ使用で速度をMAXで50ml/h位という制御になります。

②胃内に大量のガスが充満している場合に注入した栄養剤が漏れることがあります。対策として注入前にガス抜きをして胃内圧を下げるか、胃内が空の時に胃瘻カテーテルを開放して容器などに自然ドレナージをする方法があります。

③胃内容物排出能が低下し、先に投与した栄養剤が残っており新たに注入した栄養剤が漏れることがあります。間歇投与時、投与開始前に胃内の栄養剤の貯留量が150ml以上あるようであれば、消化管運動機能改善薬の投与し改善を図ります。改善が見られない場合は経胃瘻的空腸瘻(PEJ)を検討の必要があります。

④便秘による腹圧が上昇している場合に栄養剤が漏れることがあります。寝たきりの患者さんでは活動性の低下、水分摂取の低下、食物繊維の不足、腸の運動性を低下させる薬の投与があげられます。
対策として水分の増量、水溶性食物繊維やオリゴ糖飲料の投与、緩下剤や腸刺激剤の投与、腹部マッサージや摘便を行います。
これらの原因の対応法を行う前になぜ漏れているかのうアセスメントを行うことが重要になってきます。

また皮膚に潰瘍が出来ていた場合、皮膚保護パウダーや皮膚保護材を使用にて創部改善を待ちます。
(漏れを防ぐためにストマーパウチも良いと思います。) そして瘻孔部のトラブルが改善するまでは胃酸を抑制するための薬(H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬)の投与も良いと思います。しかし胃酸を抑制するための薬の使用は誤嚥性肺炎のリスクが上がるとの報告があるため創部が治癒すれば中止がしたほう良いと思います。
あと創部が改善するまでPEGチューブが体位変換時などで動くようであれば瘻孔部の創部を圧迫しないよう1か所に固定(固定場所は定期的に変更が必要です。) してもよいと思います。

参照:徹底ガイド 胃ろう(PEG管理)Q&A 

こちらの記事は、会員のスキルアップを支援するものであり、患者の病状改善および問題解決について保証するものではありません。
また、専門家Q&Aにより得られる知識はあくまで回答専門家の見解であり、医療行為となる診療行為、診断および投薬指導ではございません。
職務に生かす場合は職場の上長や患者の主治医に必ず相談し許可を取ってから実践するようお願いいたします。
専門家Q&Aを通じて得た知識を職務に活かす場合、患者のの心身の状態が悪化した場合でも、当社は一切責任を負いません。
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