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ナースマガジン vol.35

【何ぞやシリーズ第29回】呼吸リハを支える栄養療法 ってなんぞや?(COPD編)

喫煙歴のある高齢者に多くみられるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。様々な要因から、低栄養やサルコペニアを伴う栄養障害が多く見られます。呼吸リハビリテーションを行う以上は、消費されるエネルギーに見合うエネルギー量を確保する必要があります。でも普段のお食事からだけではちょっと難しい…そこで今号のテーマは「呼吸リハを支える栄養療法」って何ぞや(COPD編)?

COPDと栄養障害

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は気管支と肺胞に炎症が起きる呼吸器疾患で、軽症のうちは風邪と間違われるくらいの症状だ。しかし、長引く咳や痰、体重減少、息苦しさなどが現れると、体力の消耗が激しくなり安静時でもエネルギー消費量が増えるんだ。

同年齢の健康な人の呼吸筋エネルギー消費量が36~72kcal/dayなのに対してCOPD患者は430~720kcal/dayと約10倍、さらに炎症によって健常人の1.3~1.5倍のエネルギーが消費されるので、本来は多く消費された分しっかり摂取しないといけないよね。しかしこの疾患は食べようとしてもそれにまつわる動作で息苦しくなってしまうために、摂取量が低下してエネルギー不足になってしまうというわけだ。
エネルギー不足が「食べる」という行為によっても引き起こされるのは皮肉ですよね。咀嚼・嚥下の際、呼吸のリズムの乱れが呼吸困難を招いたり、座位の姿勢を保つことで体力を消耗したり・・・。
食欲関連ホルモンの影響や肺の過膨張で横隔膜が腹部を圧迫して腹部膨満をもたらすことも、食欲の低下に関係あるんでしょ?
それらが重なり合って必要なエネルギーが確保できなくなると、ついには自分の筋肉に貯えていたたんぱく質をエネルギーとして使ってしまうため、体力も体重も筋肉量も減ってしまう。それはCOPDの進行・悪化とエネルギー摂取量の低下の悪循環に直結するから、適切な栄養療法を行うことが大切なんだ。
エネルギー不足が解消されたら、運動療法で一気に筋力挽回ですね。
確かに栄養療法と運動療法の併用は推奨されているが、筋肉が落ちている状態で負荷のかかるリハビリテーションを進めたら、エネルギー消費量が増えるし全身性炎症を強めてしまって逆効果だろ?低強度の運動療法と栄養療法を組み合わせて、徐々に体力と筋力をアップさせていかなくちゃ。

最適で継続可能な栄養療法を

COPD患者さんの栄養療法の基本は高エネルギー・高たんぱく食。一度にたくさん食べられないから、分食や即効性のあるMCT(中鎖脂肪酸)オイルの利用、 「少量高カロリー」組成のONS(栄養補助食品)を追加、などの工夫でエネルギーアップする方法がありますよね。
ONSにも特定の栄養素を強化したものがあるから、換気時のCO2排出量を抑制したいときは高脂肪、たんぱく質の異化抑制やたんぱく合成促進を目指したいときはBCAA(特にロイシン) 、全身性炎症を抑えたい時はω3系脂肪酸の配合されたものを選択することが推奨されているんだよ。ロイシンを強化したリハビリ専用のONSは、リハビリ直後に摂ると効果的なことも知っておこう。
どうしても食べる量が足りない場合、通常短期なら経鼻胃管も選択肢になるけれど、意識もしっかりしている患者さんにとって経鼻チューブは苦痛だし、咳を誘発しちゃうよね。末梢静脈栄養も併用かなぁ?
長期になるなら胃瘻という手もあるぞ。ただ、ほぼ寝たきりで意思疎通困難な患者さんは、腸の動きが悪くて腹部膨満の状態でも訴えられないから、逆流や嘔吐を予防するために少量ずつ時間をかけて持続投与する方が安心だね。
「栄養療法」といっても個々の患者さんに最適な方法やONSは異なることが分かっただろ? 教科書だけではなく、目の前の患者さんの全人的な観察や評価に基づいた選択を心がけていこうね。(つづく)
■監修
清水 孝宏:公益社団法人 日本看護協会 看護研修学校 クリティカルケア学科 (専任教員) 集中ケア認定看護師・呼吸療法認定士・NST 専門療法士

■参考
・粟井一哉:COPD 患者の栄養管理 少量で脂質を多く含む食事を.日経メディカル p136-139 2010.1
・吉川雅則、木村弘:15 呼吸不全と慢性閉塞性肺疾患(COPD):第 10 章 各疾患の栄養管理 キーワードでわかる臨床栄養.令和版 p337-343,2020

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