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ナースマガジン vol.38

【看護ケアQ&A】自立を目指した 排尿ケア

投稿日:2022.01.31

入院時だけではなく、自宅でも施設でも、排尿は患者さんの生活とは切っても切り離せない身近なものです。令和2年度の排尿自立支援加算の新設により、多職種チームによる排尿ケアの必要性はますます高まってきています。

尿閉や神経因性膀胱などの問題に対して看護師として関わるべき排尿ケアのポイントを帶刀先生にお伺いしました。
監修:帶刀 朋代 先生
東京医科大学病院 皮膚・排泄ケア認定看護師

尿閉が続く患者の自己導尿と膀胱留置カテーテルについて

尿閉に対し入院中は間欠導尿で膀胱のリハビリを行っていましたが、退院後の施設や自宅では介護負担が増すといった理由で膀胱留置カテーテルを留置して退院されました。この判断は正しかったでしょうか?
カテーテル留置は、適応をしっかり考え遵守することが重要です。自己導尿は定期的に尿を体外に排出することが大事ですので、介護の問題などで確実に行えない場合には、腎臓保護のためにカテーテルを留置して退院するケースもあります。完全尿閉または不完全尿閉、残尿量によっても導尿のペースは変わってきますので、膀胱エコーで確認し、アセスメントしましょう。残尿がなくしっかり尿が出せるのにも関わらず、 ケアの省略のためにカテーテルを留置するという選択は、 有害事象になるため避けなければなりません。
尿閉の方はカテーテル留置か自己導尿が必要になりますが、この選択にあたり運動機能や排尿動作を確認しています。

尿閉に対して内服を併用する場合がありますが、内服期間はケースによります。例えば術後の硬膜外麻酔の影響で自尿が出ない場合には一時的な内服で済みますし、神経の損傷が起きていることが確実な場合は、機能が回復することは見込めないため、そもそも内服を続ける必要があるかどうかを含めて考えていきます。広汎子宮全摘出術後などの場合は、術後1ヵ月、3ヵ月、半年、1年の経過の中で排尿障害が回復することがあるので、経過を見つつ泌尿器科の医師と相談していきましょう。

ADLが低く、尿閉があってカテーテル留置している場合、膀胱留置カテーテル以外の方法としては尿道損傷や感染リスクを低減できる膀胱瘻という選択肢もあります。

当院では、自己導尿が必要になる方たちは、40歳代など若い世代も含めてどの年代にもいらっしゃいます。40歳代ですと、広汎子宮全摘出術後、直腸がん、脊髄疾患などの場合が挙げられます。 男女比に関しては男性の方が多いと感じています。自己導尿を行っている方は、完全尿閉・不完全尿閉含め新規で月に5件ほどになります。

残尿が多い方は、 カテーテル留置を考慮する事項※1 がみられない限り基本的には自己導尿を習得していただき退院となります。 自己導尿のやり方は、 外来または排尿ケアチームで指導します。 1日で指導できる内容ですので、 退院日に影響することはありません。
※1 カテーテル留置を考慮する事項
ADLが低い、トイレに行けない、トイレに行けるがカテーテルを把持できる握力がない、足を広げられるだけの関節の柔軟さがない、過体重で手が届かないなど


膀胱留置カテーテル抜去後の発熱について

膀胱留置カテーテル抜去後に発熱を繰り返す事が多く、 日頃から水分補給を促しています。 なかなか摂取してもらえない場合、 どのように対応したら良いのでしょうか?
膀胱が十分に機能していない方たちの中では発熱を繰り返すことがあります。 尿管逆流から腎盂腎炎を起こすこともあり、 尿路造影検査を行い診断をしていきます。 最悪の場合は敗血症になってしまうこともあるので、 発熱を繰り返す際は、 専門外来で検査が必要になります。
専門外来で造影検査を行い尿管逆流の有無を確認します。 例えば、 残尿が100cc程度あり、 逆流が認められる場合は、 常に尿を排出しておかないとすぐに逆流してしまい、 膀胱留置カテーテルの抜去や間欠導尿が難しくなります。 そのような方たちは膀胱炎を繰り返したり、(肉柱形成膀胱壁が厚く凹凸に隆起した状態)を認めます。 また、 尿を出しきることが難しく、 細菌が溜まっている状態が続いてしまうため、 カテーテルを留置したまま経過を見たりします。

水分摂取に関しては、 高齢者は特に促してもあまり飲めない方もいらっしゃると思いますが、 点滴以外の方法で工夫できることとしては、 嚥下障害や糖尿病がなければ、 果物を摂取してもらうことです。 果物は水分が多いので、 例えばりんごなどよりは、 もっと水分の多い桃やぶどうやみかんなどを摂取してもらうと良いですね。 他の食べ物でしたら高野豆腐や豆腐なども良いです。 豆腐の場合は揚げ豆腐より冷奴の方が水分を多く含んでいるので、 そういった形で食物自体に水分が多く含まれている食材を選んで食べてもらうと良いでしょう。


神経因性膀胱による排尿の訴えと認知症の関連について

排尿の訴えが多くトイレに連れていくことが多いのですが、トイレに行くと排尿がなく空振りを繰り返すケースも、神経因性膀胱と考えてよいのでしょうか?
頻尿の原因は様々です。 認知症による訴えなのか判断に迷うこともあるかと思います。しかし 「さっき行ったでしょ?」とは言わずに寄り添い、 同時に原因を探っていきましょう。まずは残尿の有無を確認することが大事になります。
通常、 腎臓から作られた尿が膀胱内に溜まってくると膀胱内は弛緩し、尿道括約筋の働きによって尿道は閉じられています(図1)。 膀胱いっぱいに尿が溜まると脊髄・大脳に伝えられ、 尿意を感じトイレにいきます。 排尿時は膀胱が縮んで尿道が緩んで排尿します。
しかし、 神経因性膀胱(図2)の場合、 通常の働きが機能せず、 うまく排尿ができなくなります。
原因は(表)の種類に分けられますが、 膀胱の縮む力が弱まっている弛緩性神経因性膀胱である場合が多いです。
認知症や認知機能の問題で脳が正常な尿意を感知できなく、 膀胱に尿が少し溜まるだけで排尿したくなるという場合は神経因性膀胱とは言いません。 しかし残尿があり、例えば膀胱内に300cc溜まった状態でトイレに行っても100ccしか排尿できないような場合は神経因性膀胱が考えられます。

残尿確認は、 膀胱容量専門のエコーはもちろん、 一般的なエコーでも測定できます。 しかし、腫瘍がある時は測定できない機器もあるので、 患者に合わせて現場で判断してください。

残尿確認の他には尿路感染の有無を確認し、 泌尿器疾患がないかを否定していきましょう。 頻尿になる原因が否定されたら認知症による影響と考え、 トイレに付き添うなどのケアをしていくと良いでしょう。


参考: 肉柱形成について 超音波検査法セミナー Chapter-3 膀胱・前立腺
http://www.us-kensahou-seminar.net/muse3/ch3/sub3/index.html

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