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尿路感染症対策における選択肢としての高濃度クランベリーの活用~各種ガイドラインにも収載~

投稿日:2024.04.08

クランベリーには、再発性膀胱炎の予防をはじめとして尿路感染症に対しての有効性が報告されています。特に『JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015』や『女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]』にはクランベリージュースの効果やエビデンスが記載され、膀胱炎の再発予防としてその使用が推奨されています。今回、その効果と活用について、老年泌尿器科診療の第一人者である、髙橋 悟先生にお伺いしました。
監修
日本大学医学部泌尿器科学系主任教授
日本大学医学部附属板橋病院 院長
日本老年泌尿器科学会 理事長
日本排尿機能学会 理事長
髙橋 悟 先生

クランベリーによる尿路感染症の再発予防効果

 クランベリーは尿路感染症の再発予防に有効とされています。 その効果は 「キナ酸 (有機酸) 」 と 「プロアントシアニジン (ポリフェノール) 」という成分によるものです。
 「キナ酸」 は、 クランベリーなどの一部のフルーツに含まれる成分で、体内で吸収されると肝臓で馬尿酸に代謝され、尿のpHを下げる効果を発揮します。
  一 方 「プロアントシアニジン」 はポリフェノールの一種で尿路への感染菌の付着を防ぐ役割を果たします(図1)。
 また、 尿路感染と併発して、 尿素が感染菌により分解されアンモニアが発生し、 尿のアルカリ化が起こる場合もあります。 この現象が尿中の成分と反応して 「リン酸カルシウムアンモニウム (ストロバイト) とい っ たアルカリ性の結晶の形成を促します。肉眼的にも 「尿砂 (尿のにごり) 」 として確認したことがある人も多いのではないでしょうか。 このにごりは膀胱留置カテーテルの閉塞にもつながります (図2) 。
 しかしクランベリーは尿を酸性化する効果があるため、 アルカリ尿結石の形成を抑制しカテーテルの閉塞を防ぐのに役ちます(図3) 。


クランベリーの膀胱炎(下部尿路感染症) 再発予防効果は各種診療ガイドラインにも収載

 クランベリーの膀胱炎予防効果は、 現在2つの診療ガイドライン 『JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015』 『女性下部尿路症状診療ガイドライン [第2版] 』 に収載され、 エビデンスとして認められつつあります。
 2019年に出された『女性下部尿路症状診療ガイドライン [第2版] 』では、 臨床上の疑問に推奨グレードとともに回答している 「クリニカルクエスチョン (CQ) 」において、 「再発性細菌性膀胱炎にはどのように対処すべきか?」 との問いに対し、「50歳以上の女性においてクランベ リージュ ース飲用は、 再発性膀胱炎を予防するという報告 (レベ ル2) もある」 ものとして [推奨グレードC1] と記載されています。推奨グレードC1というのは、 「十分な科学的根拠がないが、 有効性が期待できる可能性がある」 ということで、クランベリージュースの予防的使用をお勧めできることになります。
 同ガイドライン内のエビデンスの 一 つとなっている 「クランベリー果汁飲料の尿路感染症再発防止効果」 に関する研究結果によると、50歳以上の女性では、尿路感染の再発率について、 プラセボ群と比較して、クランベリージュース群で有意に低かったと解説されています。
 なお、 クランベリー果汁に含まれる成分をしっかり摂取するためには、 高濃度の良質な製品を選ぶことが欠かせません。


薬剤耐性におけるクランベリーの役割

 中高年の女性の膀胱炎は、 閉経によるホルモンバランスの変化や疲労などの影響から再発を繰り返したり、 重症化したりすることがあります。特にコロナ禍では受診控えがあったことも影響しました。地域によっては泌尿器科のクリニ ックが少なく、 専門的な診察 ・ 治療が受けにくいこともあるようです。
 膀胱炎を短期間に何回も繰り返している患者さんの場合、 薬剤耐性菌により治りにくいケースがみられます。 薬剤耐性ができてしまうと、 内服薬が効きにくくなり、 点滴でも効果が得られなくなることがあります。
 近年、 よく使われる抗菌薬に耐性を持つ薬剤耐性菌の増加が問題になっていて、膀胱炎治療においても閉経前の女性と、閉経後の女性で第 一 選択薬が異なるなど抗菌薬の使用方法は見直されています。
 薬剤耐性菌を作らないためには、 日頃から必要以上に抗菌薬に頼り過ぎないようにし、 できるだけ頻繁な使用は避けるなど適切な取り扱いが求められています。
 抗菌薬が必要となる膀胱炎の再発を予防するために、 生活習慣の改善に加えて、 高濃度クランベリー果汁飲料などの食品を取り入れるのは非常に大切なことだと思います。


尿路感染症を予防するための生活習慣

 膀胱炎を疑ったら早めに受診することが大切です。 ただし、 再発を予防する上で普段から自分でできることもあるため、普段から患者さんに実践するように勧めています。
 まず、 水分をたっぷり摂る、トイレは我慢しない、女性の場合、排泄後は尿道に大腸菌が運ばれないよう「前から後ろに」拭く、生理中は下着や生理用品をマメに交換して清潔にすることなどです。 このような生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られないとき、高濃度クランベリー果汁飲料を試してみるのも一つの方法だと思います。
 実際に私が診察している患者さんで、頻繁に膀胱炎を繰り返している方がいました。膀胱炎になると、 抗菌薬により治癒しますが、 2カ月くらいすると再発してしまうのです。 そこで高濃度クランベリー果汁飲料を試してみることをお勧めしたところ、 半年以上再発せず、 受診する回数が減少しました。 再発しない期間が長くなったことは自信につながり、 日常生活も楽しめるようになったといいます。


クランベリーの効果的な活用で、QOLの向上を期待

 2020年度診療報酬改定で 「排尿自立指導料」 が見直され、 入院と外来に区分した評価体系が導入されました。 患者んの入院中の対応から外来対応へと継続して包括的な排尿ケアを実施した場合、最長12週にわたって週1回点数が算定できます(3)。
 排尿自立指導料の主な算定要件は、 医師 ・ 看護師 ・ 理学療法士による 「排尿ケアチーム」 を設置し、 チームでアプローチすること。 排尿に関するケアを向上することで膀胱留置カテーテルを早期に抜去し尿路感染を防止するとともに、 人としての尊厳を守ることやQOLが損なわれないようにすることを含め、 排尿の自立ができた状態で在宅復帰できることを目指しています。
 入院から在宅復帰までの段階において、カテーテルが留置されている方、排尿障害のある方、パッドやおむつを使用している方など、さまざまな患者さんがいらっしゃいます。そのような方の尿路感染症を予防し、QOLの向上のためにできることの一つとして、高濃度クランベリー果汁飲料などの食品を活用する方法を提案してみてもよいのではないでしょうか。
(2023年10月18日取材)


参考文献
(1)編集 日本排尿機能学会 日本泌尿器科学会 協力日本女性骨盤底医学会『女性下部尿路症状診療ガイドライン [第2版] 』 リッチヒルメディカル2019年
(2)Takahashi S, Hamasuna R,Yasuda M et al.A randomized clinical traial to evaluate the preventive effect of cranberry juice (UR65) for patients with recurrent urinary tract infection. J Infect Chemother 2013; 19:112-117
(3)編集 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会『「排尿自立支援加算」「外来排尿自立指導料」に関する手引き』 照林社2020年

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