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聴きある記

日本介護食品協議会 フードスタディ勉強会 UDFとフードスタディ

投稿日:2022.12.26

近年、食べる機能のレベルに合わせた様々な介護食品が市販されるようになった。しかし安全かつ対象者の持つ機能を低下させない食事の視点からは、食品の物性以外にも留意すべきポイントが多くある。

これらの課題に取り組む活動の一環として、2022年5月17日、日本介護食品協議会主催のフードスタディ勉強会が開催された。

様々な食品を食べ方を変えて実食し、対象者の口に合っているかを確認・評価した。

食機能に対応した食形態

 食形態と食機能を対応させることは非常に難しく、食品の物性は経時変化によっても変化する。嚥下食とは、摂食嚥下障害患者の食べ方に対応するよう、前もって適宜調理や手元調整などを行った食品である。

 患者に食上げを行う際は、予め、①姿勢制御や吸引の準備など、リスクを回避するための対応策を講じる、②患者の食べる機能をリハビリテーションによって向上させるなどが必要である。

 介護食品の分類の1つにユニバーサルデザインフード(UDF)分類があり、図1が日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(学会分類)との関係を示したものである。嚥下食分類はいずれも、患者が食べる機能を①まるのみ、②押しつぶし、③すりつぶし(咀嚼)に分類し、各レベルで重なっている部分は個人差を表す。学会分類はまるのみを5つに分けており、より重度の方の対応を想定しているのに対し、UDFはすりつぶしを2つに分けており、より咀嚼能力が低下した初期の摂食嚥下障害への対応を想定している。
UDFの特徴を知る

食品物性数値化の弱点を補う 官能評価 「フードスタディ」

 「フードスタディ」とは食品が対象者の口に合っているかを確認する会議のこと。とくに不均質性の食品物性は、数値化を行うには限界があり、その弱点を官能評価「フードスタディ」で行うことが可能である。嚥下食は患者の食べる機能に対応させるが、レベルが高すぎる食形態は誤嚥や窒息が、レベルが低すぎる食形態ばかりを提供すれば食べる機能や消化機能が衰えること(廃用症候群)が危惧される。

UDF分類と注意点

 UDF分類の特徴を理解して食事を提供する際の注意点を提起する。

提起1:固さだけではダメ。 水分量で求められる機能が動く

 UDFが指標としているものとして、①かむ力、②駆出力(嚥下圧) 、③かたさ、がある。しかし、このほかに粘度、食物全体の水分含有量、食物表面の水分量、付着性、一 口量、食品の形などが機能を左右する因子となっている。これらはUDFの基準には入っていないが、まだ分かっていない部分もあり今後の課題だと考える。

提起2:不均質性の数値化には課題がある

 料理には様々な食材が使われている。個々の食材の物性を数値だけで判断するのではなく、主観的でもよいのでフードスタディを併せることが必要。

提起3:手元調整で食形態レベルは展開できる

 調理された時点では、かまなくてよい、舌でつぶせる、歯ぐきでつぶせる、容易にかめるに分類された食品も、手元で調整することで食形態の上げ下げが可能である。具体的には一口量を増減する、あんかけを追加する、他の食品と合わせるなどがある。これにより患者の日内差や持久力低下に合わせ適切に対応させることが出来る。

質疑応答

Q:食品の水分量だけでなく、唾液の量など患者の口腔内の状態に影響されるのではないか?

A:口の中を見てドライであれば喉も乾いた状態なので、口腔ケアをするなどの対応を行う。健常者同様、起きてすぐには唾液の量が少なく口腔内が乾燥しているので湿らせることが必要である。


Q:食品の物性が均質でない場合、どのレベルに合わせればよいのか。

A:患者側の条件、食品側の条件を考えるとクリアカットに決めることはできない。現状ではエビデンスが十分ではないので、フードスタディを行って決めるのがベターと思われる。

愛知学院大学
心身科学部健康科学科 准教授
言語聴覚士
日本心理学会認定心理士 博士(歯学)
牧野 日和 先生
ニュートリション・アルファ 西谷 誠

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