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ナースマガジン vol.46

【何ぞやシリーズ第40回】感染対策におけるノンテクニカルスキルってなんぞや?

投稿日:2024.03.13

糖尿病スティグマとアドボカシー活動って何ぞや
感染対策におけるチームワークの重要性が高まる中、チーム力を醸成するノンテクニカルスキルが注目されています。さて、「ノンテクニカルスキル」って何ぞや ?
作画 : 上田みう   制作 : マンガエッグ・エンターテイメント

ノンテクニカルスキルとは

最近、医療安全や感染対策において、ノンテクニカルスキルが注目されているね。医療従事者が学ぶバイタルサイン測定や採血などの医療技術がテクニカルスキルで、ノンテクニカルスキルは医療技術を補うコミュニケーションをはじめとしたスキルのことをいうんだ。

もともとは飛行機のコックピットや、戦場で培われたスキルなんだよ。
それがどうして医療現場で使われているのかしら?
アメリカの医療事故を分析すると、半数以上がコミュニケーションエラーやチーム力不足などのノンテクニカルスキルが原因で起きているというデータがあるんだよ。これまで医療業界では、テクニカルスキルが先行して教育されてきたけれど、ノンテクニカルスキルを教育して向上しなければ、医療安全は守れないという考えが広まってきているんだ。

しっかりとしたチームワークは、医療の質をより高めることが証明され、そのスキルは訓練で伸ばせることも報告されているね。WHOの「患者安全カリキュラムガイド」でも、ノンテクニカルスキルを活用することが推奨されているぞ(1)。

感染対策に活用できる2つのツール

具体的にはどうやって活用するんですか?
ノンテクニカルスキルを教育するため、アメリカで開発された「チームSTEPPS(※チーとしてのより良いパフォーマンスと患者安全を高めるための戦略とツール):チームステップス」というツールがあるんだ。チームワークを向上させて、医療事故を減少させるのに有効だといわれているよ(2)。

特に感染対策では、チームSTEPPSの中の「SBAR(エスバー)と「相互モニター(クロスモニタリング)」というツールが活用されているね。SBARは情報伝達ツールで、看護師から医師への報告の際に使われることも多いんだ。
SBARは聞いたことある!情報をS(状況:Situation)、B(背景:Background)、A(評価:Assesment)、R(要求:Recommendation and Request)に整理するから、わかりやすく伝えられるんだよね。
感染症が疑われる患者さんの報告にも効果的だね。相手にしてほしい行動も明確で、コミュニケーションエラーの予防にとても有効だよ。

もう1つの相互モニターは、チームメンバーをよく観察して、もし間違った行動をしていたら指摘する方法のことなんだ。
もとくんがチームメンバーに手指消毒の声かけをしていたのは、まさに相互モニターなのね。

チームがあるべき姿を共有することが大切

注意点として、ノンテクニカルスキルが重視しているのは、チーム力の醸成だと覚えておこう。だから、誰か一人だけ頑張っていても効果が出にくいんだよ。
確かにノンテクニカルスキルの目的や意味を認識していないと、「よく注意される」って反発があるかもしれないわね。
何のためにしているのかをメンバーが理解して、チームで共通認識することが必要なんだよ。チームSTEPPSを取り入れている病院、施設では「守るべきは患者さん」という考えを重視していて、そのあるべき姿をチームで共有しているんだ。基本的な感染対策は知っていても、私たち人間は、うっかり忘れてしまうこともあるだろう。それをチームで補うのがノンテクニカルスキルで、そのためのツールがチームSTEPPSなのさ。
組織やチームが一丸となって取り組むことが大切なんだね。患者さんの一番近くにいる僕たち看護師は、多職種チームの中心となって取り組んでいきたいね。
(つづく)
監修:
東京慈恵会医科大学附属病院 医療安全管理部門 感染対策部 感染管理認定看護師 美島路恵 先生

参考:
1) WHO「患者安全カリキュラムガイド:多職種版 2011」
日本語版発行 東京医科大学 医学教育学・医療安全管理学
https://www.who.int/docs/default-source/patient-safety/9789241501958-jpn.pdf?sfvrsn=848131c4_1
2) 訳・編集 国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部
「ポケットガイド チームSTEPPS2.0+チームとしてのより良いパフォーマンスと患者安全を高めるための戦略とツール」
第17版2023年7月1日改定

おことわり 原著から引用した「患者安全」の記載は「医療安全」の英語表現 patient safetyの直訳です。

監修の美島先生より動画メッセージ

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