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今日から役立つ!口腔ケア実践講座第1回

今日から役立つ!口腔ケア実践講座 食べられる口づくり 第1回 口腔ケアとは口の機能を維持させ続けること

投稿日:2015.06.05

口腔ケアがよくわからない…」という声をよく耳にします。
口腔ケアに対する正しい認識と実践は、医療・看護・介護の現場で重視されています。口腔ケアの質は生活の質を左右する重要なポイントです。
看護師として口腔ケアを正しく理解すると共に、ご家族様やヘルパーさんにも指導してあげてください。

●口腔ケアの目的は?

「口腔ケアとは?」と問われると、「歯磨き」や「舌の清掃」を通して誤嚥性肺炎を予防する、というイメージが先行するのではないでしょうか。
口腔の衛生管理は、人が人として生きていく上で無視できない取り組みではありますが、それだけで誤嚥性肺炎を防ぐことはできません。
誤嚥性肺炎を引き起こすもっとも大きな原因は、生活不活発病(廃用症候群)であると考えられます。
例えば、食べる・話をする・表情をつくる、という、人が豊かに生きていく上で必要な働きを担う器官が「口腔」であり、口腔ケアとは、これら食べる・話をする・表情をつくるための口腔の機能を守るケアである、と言い換えることができるのです。
中でも「食べること」は、療養中の高齢者にとっては生きがいとも言える楽しみであると同時に、人や社会と触れ合う大切な機会ともいえます。
そのような楽しみや機会が奪わないよう“食べられる口”の機能を維持させ続けることが、口腔ケアの大切な目的なのです。

この理解で口腔ケアを考えないと、不要に口腔機能を低下させて食べられなくさせてしまい、身体や生活に支障をきたす結果につながる可能性があります。
日常生活(特に食事)における変化や異常に気づき、その原因を見極め、解決に向けて誰が何をするのか、目標と役割を明確にした口腔ケアに取り組みましょう。

日常生活における観察ポイントと対応

[摂食]

・食事介助が必要である
・食べこぼしがある
・食事御認識が弱い
⇒食事認識が低下している可能性
◎食事観察、食形態改善提案、食事環境改善提案を行う

[咀嚼]

・硬いものを残しがちになった
・食事にかかる時間が長くなった
・飲み下すまでに時間がかかる
⇒虫歯や歯周病、入れ歯に問題がある可能性
◎歯科検診、歯科治療、義歯作成、義歯管理を行う

[嚥下]

・お茶や汁ものでむせることがある
・食べるときに飲み込みにくそう
・薬が飲みにくそう
⇒嚥下反射の低下や嚥下筋の筋力低下の疑い
◎嚥下評価、嚥下リハビリテーションを行う

[渇き]

・水分摂取量が減った
・話すときに舌が引っかかっている
・発音がはっきりしない
⇒身体の水分が足りていない可能性
◎必要水分量の算出、口腔乾燥評価、水分摂取方法提案、口腔乾燥対処療法を行う

[栄養]

・週億時の後半にペースが落ちる
・少し痩せ気味
・車椅子を使用している
⇒食事行為を支えるためのエネルギーが不足している可能性
◎簡易栄養評価、栄養改善提案を行う

[衛生]

・口臭が気になる
・うす味が分かりにくそう
・歯磨きをしない
⇒口の中の細菌が増えている可能例
◎航空衛星評価、口腔衛生指導、口腔機能維持管理サポートを行う

●こんな口では食べられません!

例えば口臭は、疾患や食べ物が原因のこともありますが、口腔衛生管理が不適切な場合がほとんどです。
歯に付着した歯垢、舌を覆う舌苔、上あごに貼りついたままの乾燥した汚れの層などには、驚くほどの細菌が存在し、口臭の原因となっています。
また、細菌だらけの唾液を誤嚥することによる肺炎発生のリスクも無視できません。
口腔衛生管理がされていない状態では「食べられる口」とは言えません。
口腔(入れ歯も含む)を清潔に保ち、細菌の増殖を防ぐことを主な目的として行われるケアを、器質的口腔ケアといいます。歯磨きやうがい、舌や頬粘膜の清掃などによって、虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎の予防を目指します。

一方、口腔をきれいにしただけでは、食べられる口とはいえません。食べ物を取りまとめて咽頭に送り込むためには、歯だけではなく、適度な唾液や、くちびる・舌・頬の協調運動が欠かせません。
これら運動器官に対して、マッサージやストレッチ、筋トレを駆使して行うケアを、機能的口腔ケアといいます。

●口腔ケアを始める前に

感染予防を念頭に置き、口腔ケアを行う人は、グローブとマスクを着用します。

口のまわりは非常に敏感な部位で、痛いきなり触られたくない場所のひとつです。
全身状態や感情を慮って、相手の呼吸に合わせて安心・安全・快適なケアの提供を目指しましょう。
不快な思いを経験させてしまうと、それ以降の関係回復が困難になりますので、留意が必要です。
突然くちびるに触られることは、快適であるとはいえません。
準備段階で温かなタオルなどで顎に触れて、口腔周囲筋の緊張を解くなど、快適な導入を目指しましょう。
歯科医師や歯科衛生士と口腔ケアのポイントを共有することも大切です。

●「なぜ?」の視点を忘れずに

1.覚醒しているか

2.意思疎通が可能か(指示を理解して対応できるか)

3.身体状況に問題はないか(熱や体調不良など)

4.口腔内に炎症・出血・腫れなどはないか

5.口は開けられるか

6.安全な姿勢を維持できるか

7.落ち着いてリラックスできる環境になっているか

8.反応過敏の程度

 監修 

医療法人社団コンパス
理事長/歯科医師

三幣 利克  (みぬさ・としかつ)

※コンパスデンタルクリニックパンフレットより改変引用
※次号では、器質的ケアの実際をお届けします。ご期待下さい!

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