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新型コロナウィルス感染症(COVID-19)次の波に備える

特集2「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)次の波に備える」TOPIC3

いま問い直す 安全なロ腔ケア

ロ腔内には多くの細菌が存在しており、患者は肺炎発症リスクと、医療者は感染リスクと隣り合わせなのがロ腔ケア。両者にとって安全なロ腔ケアのポイントを、藤田医科大学歯科・ロ腔外科学主任教授の松尾浩一郎先生にお伺いしました。
松尾浩一郎先生
藤田医科大学医学部 歯科・ロ腔外科学講座 主任教授

飛沫感染のリスクが高いロ腔ケア

当院でも新型コロナウイルス感染症患者を多く受け入れましたが、感染対策を徹底することで、二次感染者はゼロという結果になりました。当院は国際的医療施設評価機関であるJCl(※)の認証を2018年に取得し、感染対策の基本的なべースが備わっていました。
口腔ケアの際は飛沫(エアロゾル)感染のリスクが高いため、新型コロナウイルス感染症の流行如何にかかわらず標準予防策が必要ですが、感染拡大時期には特に個人防護具(PPE)の着用が必要となります。

※JCI(Joint Commission International)
1994年に設立された第三者の視点から医療施設を評価する国際非営利団体で、患者の安全性、高品質な医療の提供、院内の継続的な改善活動の仕組み等を評価する。世界で最も厳しい基準を持つ国際的医療施設評価機構。
口腔ケア実施時の注意点
◎歯ブラシ・保湿剤・口腔用ウェットティッシュ・タオルなど、必要なものをまとめて手の届くところに置いておく
◎患者の上体を起こし、水や汚れが咽頭に流れて誤嚥しないように注意する
◎患者がむせないように、口腔内に汚れや唾液が溜まったらまず拭き取り、できるだけ吸引で取り除く(吸引器があった方が望ましい)
◎患者に指を噛まれないよう、頬側に指を沿わせて愛護的に開口する バイトブロックを使うこともある
◎出血がある場合、血液感染には十分注意する
口腔内や唾液・血液を通して細菌に接触したり、ケア中の刺激や誤嚥でむせた飛沫を吸い込まないように!

ロ腔ケア時にロ腔内環境の確認を 〜OHATの活用〜

感染拡大時だからといってロ腔ケアの回数を増やす必要はなく、今まで同様1日3回(朝・昼・タ)、日々のケアを確実に行いましょう。在宅や施設への訪問歯科診療等も、感染のリスクがあるために断ったり断られたりしたケースがあるようですが、日常のロ腔ケアを行うのは家族や施設の方です。第2波に備えたこのような時期だからこそ、ケアの動機付けや教育に力を入れてほしいと思います。ご家族や施設スタッフの技術を磨いておけば、感染症が流行しても慌てることなく対応でき、ケアの統一やレベルの均 化も図れます。また、オンライン診療の導入やOHAT(図1)を使った口腔内環境情報の共有も、口腔ケアと並行して行うと効果的だと思います。
8つの項目(口唇、舌、歯肉、粘膜、唾液、残存歯、義歯、口腔清掃、歯痛)を、0=健全、1=やや不良、2=病的の3段階で評価する。いずれかの項目で2、もしくは残存歯・義歯・口腔清掃で1以上は、要歯科受診と判定される。

検索:藤田医科大学医学部歯科教室
>研究活動>プロジェクト>「口腔アセスメントツールとしてのOHTの活用」参照
http://dentistryfujita-hu.jp/reseach/project.html

実際のロ腔ケア教育

当院では毎年、病棟ナース全員を対象とした全体の勉強会を行っています。前半は私が講義を行い、後半は歯科衛生士が口腔ケアの実地指導を行う2部構成です。普段からオレンジ色のスクラブを着た歯科衛生士が病棟にいるので、分からないことや相談したいことがあるときは、いつでも彼らに質問できる態勢をとっています。実際のロを見ることで、今まで自分に足りなかった視点や評価の間違いにも気づくことができます。
正しいロ腔ケアによって患者のロ腔内の清潔が保たれると、明らかに病棟の匂いが変わり、病棟全体のモチベーション維持や意識改革につながります。そういう意識をもって口腔ケアを行ってゆくことが、医療者・患者双方にとって安心、安全な口腔ケアにつながると考えます。

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