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何ぞやシリーズ第27回「生活や想いに寄り添った靴選び」って何ぞや?

患者さんの抱える疾患によって足の状態も様々。
靴は足を守るためのもので、足を守るのは歩くなどの移動動作を円滑に行うためですよね。その人に最適な靴(履物)を選ぶために、足の状態や全身状態に加え、もう一つ大切な視点があります。さて、「生活や想いに寄り添った靴選び」って何ぞや?

家族関係が見えた

潰瘍ができやすくて治りにくい患者さんは、靴擦れが重大な足病変の引き金になるって、あんなに伝えたのになあ。息子さんが付き添ってこられたので、ご家族も一緒にお父さんの足を守ってくださいね、って言ったら「こんな小さい傷、すぐ治るんでしょ?」ですって。
でも、靴擦れに気がついてくれてよかったよ。
神経障害で痛みを感じない、視力の低下で傷を発見しづらい、というような人は、靴擦れに気づかないことも多いからね。息子さんは同居なのかな?しっかり自宅でのケアを学んでもらわないとね。
来週また一緒にきていただく約束をして、パンフレットを渡したら、このグラフを見て驚いてました。実は息子さん、何年も家にいなかったので、清水さん、戻ってきたのがすごく嬉しかったんですって。息子さんが会計にいっている時、私にそっと「これ、サイズが合わないってわかってたんですよ」って打ち明けてくれたの。自分の足以上に、まず息子さんとの関係を大切にしたかったということかしらね。

頭ごなしに指示していない?

靴選びといえば、脳梗塞の後遺症で片麻痺の残った患者さんのことを思い出したよ。とても前向きで、自分のことは自分で、をモットーにしている女性。ある日、ヘルパーさんと散歩用の靴を買いにいって、紐靴を買ってきたんだ。
片麻痺で紐靴は難しいですよね。マジックテープのベルトタイプを薦めなかったのかなあ?
もちろんヘルパーさんにも店員さんにも薦められたそうだよ。でも、頭ごなしに「あなたはこっちのベルトタイプからサイズの合うものを選びましょう」って見ていた靴を棚に戻されてしまったそうだ。彼女は、「私にだって好みやこだわりがある。まず、それを受け止めてほしかった。今は履けないって私にもわかってたけど、なんだか悔しくなっちゃって。でもこの紐靴がはけるように、リハビリ頑張るわ」って、後日笑って話してくれたけどね。
私たち、できるだけ扱いやすそうなものを選んで薦めているけど、身支度に関するこだわりや好みは人それぞれ、という当たり前のことを忘れがちかもしれないわ。
適なプロセスとゴールを一緒に考えて導いていけるといいね。

生活を壊さずにできることを

この患者さんのケースも、悩ましかったなあ。MSWの山本さんにもいろいろ情報を集めてもらったっけ。
足底に創傷ができて免荷が必要なんだけれど、専用の装具にお金をかける余裕はないって言われちゃったんだ。でも、今履いているものでは傷を圧迫してしまうから、まずは別の履物にしようということになってさ。免荷効果とコスト、両方の条件を満たす方法は?って話し合った末、このサンダルになったわけ。創部が当たるところをくり抜いて、その縁は底の側を厚くして、歩いて荷重がかかっても傷が底に触れないようにしたんだ。当時の生活状況を考えたら、つなぎの方法としてぎりぎり許容範囲だったんだよね
医療装具としての靴やインソールは保険を適用することもできるけれど、作るとなると一旦まとまったお金が必要ですものね。誰もが専用の装具を利用できるわけではないからこそ、みんなの知恵や情報を結集しないとね。
足を守るために生活そのものを壊してしまわないか、生活背景を把握した上でできることは何かを考える、そんな視点を忘れないようにしたいものだね。
(つづく)
■監修:
足のナースクリニック代表 皮膚・排泄ケア認定看護師
日本トータルフットマネージメント協会 会長
西田 壽代 先生

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