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教えて 吉田先生! 【知っておきたい!高齢者の栄養管理 サルコペニア・フレイル予防】

第1回 国際標準の低栄養診断「GLIM(グリム)基準」とは?

投稿日:2022.06.27

高齢者が知らず知らずのうちに陥りやすい低栄養。低栄養は高齢者の日常生活動作(ADL)を低下させ、ときに命にかかわることもあります。

看護師が知っておきたい、高齢者の栄養管理について吉田貞夫先生から学ぶ新連載。今回はGLIM基準について伺います。
ちゅうざん病院 副院長 吉田 貞夫先生

低栄養の診断は難しい?

 みなさんは、「この患者さんは低栄養」「この患者さんは低栄養ではない」と、キッパリ言い切ることができるでしょうか?「血清アルブミン値が2.7g/dLだから低栄養!」これは正しいでしょうか?肝硬変の患者さんや、外傷による大量出血後の患者さんでは、低栄養ではなくても血清アルブミン値が低下していることがあります。「体重が5kg減少しているから低栄養?」もともと肥満の患者さんで、頑張って運動して痩せただけかもしれませんよ。「食事を半分程度しか食べていないから低栄養?」ではどのくらいの期間、食事を食べなかったら低栄養になるのでしょう?低栄養の診断は、意外と難しいのです。
 低栄養をアセスメントするために、これまでいくつかのアセスメント・ツールが開発されてきました。主観的包括的評価SGA(Subjective Global Assessment)、MNA(Mini Nutritional Assessment)、血液検査値を用いたCONUT(Controlling Nutritional Status)などです。

 近年、高齢者の低栄養は骨格筋が減少し、筋力、身体機能が低下するサルコペニアや、転倒・骨折、入院などのリスク状態、フレイルなどと関連が高いことが示されました。サルコペニアやフレイルは、さまざまな疾患の原因となるほか、手術などの合併症が増加することもわかってきました。低栄養を診断するためには、骨格筋量の減少なども配慮する必要があるのです。

新しい国際標準の低栄養診断「GLIM(グリム) 基準 」

2018年、国際標準の低栄養診断として提唱されたのが「GLIM(Global Leadership Initiative on Malnutrition)基準」1)です。GLIM基準では、意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少の「現症」と、食事摂取量減少/消化吸収能低下、疾患による炎症の「病因」の評価から低栄養の判定を行います(図1)。また、「現症」の3項目から、低栄養の重症度の判定を行います。


低栄養はやがて病名になる ?

 2018年、世界保健機関(WHO)が、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)を公表しました。数年以内に、第12回改訂(ICD-12)が行われることが予定されています。ヨーロッパ臨床栄養代謝学会(ESPEN)などが中心になり、低栄養を診断名としてICD-12に収載するための取り組みが行われています。収載された際には、低栄養が独立した診断名になるわけです。診断を行うためには、診断基準が必要です。その診断基準に該当するのが、GLIM基準なのです。

GLIM 基準、病院や施設などでも やってみた方がいいの ??  いや 、やらないといけなくなるかも!

 今まで低栄養のアセスメントは、SGA、MNAなど、さまざまなツールを用いて行われてきました。しかし、ICD-12などの国際的なトレンドを考えると、今後は病院や施設などでもGLIM基準で低栄養の診断を行うことが必要と考えられます。ICD-12に低栄養が診断名として収載された際には、GLIM基準で低栄養の診断を行わないと、低栄養に対するケアが行えないといったことにならないとも限りません。ぜひ今から、GLIM基準を導入する準備を始めてみてください。

参考文献 
1)Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, Gonzalez MC, Fukushima R, Higashiguchi T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition ‒ A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1‒9.

次回から3回にわたり、実際にGLIM基準の診断を行う方法について解説したいと思います。

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