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西山順博先生に訊きました

『ケアに活かせる栄養療法の豆知識』第30回 健康維持に 欠かせないビタミン⑧ 葉酸

西山順博先生に訊きました『ケアに活かせる栄養療法の豆知識』第30回

健康維持に欠かせないビタミン⑧ 葉酸

葉酸は、ホウレン草の抽出物から発見されたビタミンB群の一種で、ビタミンB9とも呼ばれます。

プテロイルポリグルタミン酸およびその派生物の総称で、食品や生体の中では多様な形態で存在し、DNAやアミノ酸の合成、アミノ酸やビタミンの代謝に関与しています。正常な細胞分裂や成熟への影響も大きく、発育においても重要なビタミンと言えます。

葉酸とは

 植物の葉に多く含まれ、光や熱に対しては不安定な水様性ビタミンです。ビタミンB12と並び「造血のビタミン」として、赤血球の生産に関わる重要な役割を持ちます。赤血球は毎日40~50mLが新しく作られ、約4カ月で寿命が尽きた赤血球と入れ替わっています。さらにDNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の生合成を促進するなど代謝にも関与し、細胞の生産や再生に影響を与えることから、体の発育にも重要なビタミンとして知られています。

■葉酸のはたらき

 食品中ではそのほとんどがプテロイルポリグルタミン酸として存在しており、摂取後の小腸における加水分解や食品調理の過程でモノグルタミン酸型に変換され体内に吸収されます。その後、細胞内で再びポリグルタミン酸型となり、補酵素としてはたらきます。

 細胞の分裂や成熟を大きく左右するため、特に胎児の成長には重要な栄養成分です。妊婦が葉酸を十分に摂取することで胎児の先天異常である神経管閉鎖障害のリスクを低減するとして、積極的な摂取が推奨されています。

 最近の研究では、ビタミンB12と葉酸の摂取が、動脈硬化の危険因子と考えられているホモシステインを、メチオニンに変換する反応を促進させることが報告されました。さらにメチオニンは血中コレステロール値を低下させる可能性があるとも言われており、虚血性心疾患の予防効果が期待されています。

■葉酸の欠乏症

 栄養調査(令和元年国民健康・栄養調査)の結果から、日本人は主に野菜から十分量の葉酸を摂取していることが示され、通常の食生活においては葉酸欠乏症の心配はほとんどありません。しかし、食事そのものの摂取量が不足した時や小腸の吸収不良時に、葉酸不足や吸収能低下により起こりやすくなり、妊娠中、授乳中、ピル・抗がん剤・免疫抑制剤・抗けいれん剤・非経口栄養剤投与時、アルコール多飲、血液透析などの際にも欠乏症を発症することがあります。

巨赤芽球性貧血(成長期の悪性貧血)

原 因:赤血球の巨大化による酸欠状態

症 状:立ちくらみ、動悸、息切れ、頭痛、集中力低下など

粘膜系(胃、腸、口、舌など)の炎症

原 因:たんぱく質合成能の低下による細胞分裂の停滞や細胞の未成熟

症 状:口内炎,舌のただれなどの粘膜症状

神経管閉鎖障害(胎児の先天異常)

原 因:妊娠初期(妊娠4~8週)での葉酸不足

症 状:二分脊椎、髄膜瘤、無脳症など

葉酸を上手に摂取しよう!

 葉酸は、植物性の食品に限らず動物性の食品であるレバーなどの肉類、藻類、嗜好飲料類、卵類、乳類、豆類などに多く含まれています。一方、ポリグルタミン酸型の葉酸を吸収可能なモノグルタミン酸型に変える葉酸のはたらき(酵素)を阻害する化合物がオレンジジュースやバナナには含まれているため、摂取には注意が必要です。

 特に妊娠中は、細胞の遺伝子情報であるDNAをはじめ胎児の成長のためには活発な細胞分裂を促進し、葉酸の必要量が通常の2倍近くになるため、積極的な摂取が望ましいと言われています。妊娠を予定・計画している場合は、妊娠前から食事のメニューやサプリメントで補給しておくと良いでしょう。極端な食事制限によるダイエットで葉酸不足のまま妊娠に気づかず、胎児へ悪影響を及ぼすことも あります。ダイエット時こそ緑黄色野菜などを十分に摂り、食事の栄養バランスに気をつけることが大切です。
ビタミンB2を摂取しよう

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