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ナースマガジン×キッコーマンニュートリケア・ジャパン

【座談会】在宅での排尿ケアの取り組みと今後のあり方について考える

投稿日:2023.03.29

膀胱留置カテーテルを使用している在宅療養者は、尿路感染症やカテーテルの閉塞など排尿ケアに関するトラブルが起きることも少なくありません。この度、ナースマガジンでは6事業所の訪問看護ステーションご協力のもと、排尿ケアに課題を抱えている療養者の方にクランベリー高濃度果汁含有食品を使用していただきました。本座談会では、NPO法人日本コンチネンス協会名誉会長の西村かおる先生を座長にお迎えして、訪問看護ステーションの皆さまに事例をご紹介いただき、膀胱留置カテーテルに関する現状、課題解決に向けた取り組みについてディスカッションしていただきました。

座長紹介

西村 かおる 先生
コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役
NPO法人日本コンチネンス協会 名誉会長
訪問看護師として勤務した後、英国に留学しコンチネンスケアを学ぶ。
帰国後、コンチネンスセンター(排泄ケア情報センター)を開設。その後、日本コンチネンス協会、コンチネンスジャパン(株)を設立。現在、全国各地の病院、施設でコンチネンスのアドバイザーを務める。

参加者紹介(2023年2月9日 オンラインにて開催)



モニター実施期間
2022年9月~順次開始(約3か月間)

今回のモニターに使用したツール
クランベリー高濃度果汁含有食品

モニタリング方法
膀胱留置カテーテルを使用している在宅療養者を対象に約3か月間、クランベリー高濃度果汁含有食品をご使用いただきました。
カテーテル交換時看護師に、事前に配布したチェックシートを用いて6つの項目(尿の悪臭、尿の白濁、カテーテルへの結石の付着、尿バッグ中の結石浮遊物、排尿器周辺のスキントラブル、紫色畜尿バッグ症候群(purple urine bag syndrome:PUBS))について評価していただきました。


膀胱留置カテーテル使用による排尿トラブル予防のために

西村:
 在宅療養者の中には長期にわたる膀胱留置カテーテルの使用により、 さまざまな課題を抱えている方も多いのではないでしょうか。
柏木:
 当ステーションでは重症度の高い方が全体の7割以上を占めています。 緊急コールも多々ありますが、排尿トラブルに関する緊急コールも少なくないですね。 今回事例としてご紹介する方もほぼ毎月のように尿路感染症による発熱がみられており、都度解熱剤を使用しながら抗生剤を投与していました。
藤井:
 そうですね。 私のステーションでも、排尿に関する緊急コールはあります。 膀胱留置カテーテルを使用している方は、 尿路感染症やカテーテル閉塞などのトラブル発生によりカテーテルの定期交換を待たずに交換となることがあります。
富樫:
 同じく当ステーションでも尿路感染症を頻回に起こす方がいらっしゃいます。抗生剤を使用することが多いため、 薬剤耐性により薬の種類によっては効果が現れにくくなっている、 というケースもあります。
西村:
 膀胱留置カテーテルが必要な方にとって、 繰り返す尿路感染症は生命予後にも関わる問題だと思います。予期せぬ排尿トラブルや緊急対応は、 療養者だけではなく介護者にとっても負担が大きいものです。療養者ご本人はもちろんのこと、 介護者や療養者に関わるスタッフのためにも排尿トラブルを未然に防いでいきたいですね。

ひろがるクランベリー高濃度果汁含有食品の活用

西村:
 今回のモニターでは、 チェックシートを使って尿の性状を評価していただきました。 チェ ックシートを見ると、 クランベリー高濃度果汁含有食品の使用により尿の性状に改善傾向がみられた方もいらっしゃるかと思います。
 約3か月間、 ご使用になって感じられた変化やご意見を聞かせていただけますか?
富樫:
 以前からクランベリーに含まれる成分の排尿に対する効果 (図1)について注目していました。 今回、 尿路感染症を繰り返している方におすすめしたところ、 経過としては、 使用中は尿路感染症が起こりませんでしたし、 強かった尿臭が軽減したように感じました。
柏木:
 私のステーションでも尿路感染症を繰り返している方に使用していただき、 使用期間中は排尿に関する緊急コールがありませんでした。 紹介した以外の方からも 「膀胱留置カテーテルの交換頻度が3週間に1回から4週間に1回に変わりました」 といった声が寄せられました。
西村:
 チェ ックシートの集計結果 (図2) でも、膀胱留置カテーテルの交換間隔が延長していました。 これは、 尿路感染症の発症や臨時のカテーテル交換が減少したことが要因として考えられるのではないでしょうか。

 他にはどのような変化がありましたか?
藤井:
 60歳代の女性にご使用いただきました。 以前からカテーテルの接続部分に付着物が多く、 カテーテルが閉塞することがありましたが、 使用期間中、 付着物の増加はなくカテーテルの閉塞もありませんでした。
片倉:
 私のところでは80歳代の男性に使用していただきました。 担当の看護師からは、カテーテルの先端に付着している結石が減少していることと尿の悪臭が軽減したのではないかという報告を受けました。
西村:
 尿臭についての評価では、 グラフ (図3) が示すように実施前と比較してスコアの減少が見られますね。 モニター期間を通して特に変化がなかった方もいらっしゃると思いますが、 ご使用になっていかがでしたか?
加藤:
 当ステーションでご使用いただいた方は、 元々大きな排尿トラブルはなく、 やや濃縮尿がみられる程度でした。 モニター期間を通して尿の性状に大きな変化は見られませんでしたが、 現状維持ができたことからクランベリーの成分により悪化予防が期待できるのではないかと考えています。
 元々積極的に水分摂取をされる方ではありませんでしたが、 介護者であるご家族が昼食時に毎回声をかけてくださることで継続的に使用していただくことができました。
西村:
 ご家族の積極的な関わりが身近に感じられるのも在宅ならではですね。 クランベリー高濃度果汁含有食品については、 何かおっしゃっていましたか?
加藤:
 元々のお好みで酸っぱいものやジュースなどは口にしないという方でした。 「もう少し酸味が抑えられたらもっと飲みやすいな」 とおっしゃ っていたので、ご家族の協力に助けていただいたところもあります。
今村:
 私のところでも酸味が苦手な療養者がいらっしゃいましたが、 その方はご自分でオレンジジュースや野菜ジュースなどを混ぜることで飲みやすくなったと言っていました。
西村:
 工夫によって味わいのバリエーションが広がりますね。 ご家族の協力やご本人の嗜好を考慮して関わることが継続してご使用いただく上で重要であることが分かります。 実際に事例をお伺いすると様々なご意見や療養者の声を知ることができますね。

座談会に参加してくださった訪問看護ステーションの事例をご紹介


継続的に排尿ケアを行うために

西村:
 今回モニターにご協力いただきましたが、 在宅領域で膀胱留置カテーテルを使用されている方の排尿ケアに対して看護師はどのように関わっていけると良いと思いますか?
柏木:
 モニター期間終了後、 約2週間がたった頃に対象者の方に尿の混濁が出現したり、膀胱留置カテーテル閉塞による緊急のカテーテル交換があったので、 期間修了後の変化も感じているところです。
 療養者の方からは継続してクランベリー高濃度果汁含有食品を使用したいというご意見もいただきました。継続にあたっては経済的な面も検討する必要があるかと思いますが、 療養者の状況を考慮した上で、 今回の経験を活かして情報提供していけたらと思っています。
富樫:
 療養者の方は脊髄損傷により訪問看護導入となりましたが、 神経障害性疼痛がありオピオイドを使用しています。繰り返す尿路感染症によりさらに服薬が増えること考えると、 食品として排尿ケアにアプローチできるのは意義のあることなのではないかと感じています。
片倉:
 そうですね。 実際にご使用いただく中で、 定期的に使用することが難しい療養者もいらっしゃいました。 そうした時にケアマネジャーや他職種と連携して関わっていくことが大切だとあらためて感じました。 また、療養者の尿の性状の変化に対して主治医の先生が興味を示してくださったり、 ご協力いただいた先生と情報が共有できたこともよかったと思います。
西村:
 療養者の日常生活を支援するという視点からも看護師、 医師、 ケアマネジャーなどチームとして考えていけると良いですね。 在宅で看護をしていく中で膀胱留置カテーテルのさまざまな課題に直面することもあると思いますが、 訪問看護師の皆さまの日々の努力、 工夫が排尿ケアに繋がっているのだと感じました。
 クランベリー高濃度果汁含有食品の取り組みをご発表いただき、 在宅での排尿ケアの課題解決に向けてさまざまな可能性があることが分かりました。 皆さまがおっしゃ っているように食品として活用できるのは意義のあることですね。今後、 在宅の場で排尿ケアでお悩みの方にも情報提供してご活用いただけることを期待しています。本日は、 貴重なお話、 ご意見をありがとうございました。

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