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神戸の訪問看護師 藤田 愛さんのコラム

千分の一のコロナの訪問看護⑨

※原文およびその他の投稿内容については、藤田さんのフェイスブックでお読みいただけます。

1000分の一のコロナの訪問看護⑨

コロナの在宅主治医「かかりつけ医への配慮」平常時のお作法が初動を遅らせる
この問題を述べるのは少し気が重いが、きっと全国共通の問題だと思うので、綴っておくことにします。

入院待機の療養者が増え、かかりつけ医の自宅療養者への診療が余儀なくされてきた。
しかし、病院も診療所も通常診療業務、感染リスク等で訪問することはできない医師が多い。
訪問看護事業所も同じで、その状況は十分理解しており、批判でないこと信じていただけるとありがたい。

神戸市は全件入院方針できたので、保健所がかかりつけ医と連絡や連携することはほとんどなかった。
しかし、自宅療養者が増え、在宅コロナ主治医(コロナの自宅待機・療養中だけの主治医)の調整業務を担うことになった。私は見ることはできないが集約したコロナ対応医師のリストや有志の医師の対応できますリスト等があり、それを参考にしながら保健師がコロナ在宅主治医の調整をしている。

私もそのようなリストができるまでは、医療介入が必要な場合、もしくは予測される場合、療養者本人の了解を得てかかりつけ医に連絡を取り、事情を話し、先生はどこまで対応が可能か、もし無理なら、診ていただける医師にお願いしてもよろしいでしょうか。
この確認は診療中で電話に応じれない場合は、半日くらいかかる時もあれば、休診時間(日)なら2日も待たないといけない。

「診れません、どうぞ」だけのために初動が遅れる。
誰も幸せじゃないけど、このお作法は従来から重んじられてきた方法で、今は保健所が同じ方法で対応をしている。

コロナ主治医に空きがある医師も、かかりつけ医がいらっしゃるのに診療していいのか、まして訪問看護指示書を交付していいのかと気遣う。

この過程が何をもたらすか、在宅での初期治療を遅らせる。

目の前に酸素飽和度が下がり、水分も取れない状態が出てきた療養者。
看護師はすぐに動けるのだが、医療介入が必要なので医師の診療がや指示が必要である。
このエリアなら新患でもコロナ主治医が存在していて、空きがあることが分かっている。
取り次ぐ事務の方の急ぎへの理解が得られることもあれば、診療中はおつなぎできません。
そこの病院のお返事は日ごろの訪問診療で分かっている、「診れません、どうぞ」である。
でも待つしかない、半日、、、。

対応をしますというお返事をしている診療所の医師でも、酸素飽和度の低下があり、お休みに入る前によろしければステロイドの処方と酸素の手配をお願いしたい、お忙しければ酸素はこちらで手配もできます。薬局に薬も取りにいけます。

は?あなた大丈夫?酸素が必要でステロイド処方しなあかん患者は在宅で診るなんてできるわけないでしょう、うちは往診もできないし。

ならば、診られる先生を探してお願いしてもよろしいでしょうか、
粘った質問がさらに火に油を注ぐ。

ですから、医師を探すより、保健所に言ってさっさと入院させ下さい。あなたとはこれ以上話したくないと電話は一方的に切られた。

何度経験してもまあまあきつい。
私はこれでまたやばい看護師レッテルが一枚増えた上に、このような状況だと診れる医師に受けてもらえない。入院、先生のおっしゃるとおりである。でも先生、入院できるならとっくに入院させてるよ。
何より、悲しいのは、今なら悪化を防げるタイミングと思うのに、そのお作法がゆえに初動が半日、数日遅れること。
このお作法を先に仕組みにしてもらうことはできないのだろうか。

「うちはコロナの診療は診れません、他の先生に頼んでいいただいてかまいません、必要があれば情報提供します」リスト。そしたらその時診れる医師と初動を急いで、事後報告できる。

ずっと前からこれが難しい。
色々な事情があるのだろうけど、災害時は特例でそんな仕組みができてほしい、医師の助けがなければ、看護だけではどうにもできない。

コロナ治療にあたる病院の医師が半日、一日を費やして往診や電話での健康観察をしなくてはならない、いや先生たちご自分の持ち場で一つでも多くの病床があくことに専念していただきたい。一人でも多く、コロナ中の他の急性の疾患イベントに対応していただきたい。

目の前で悪化する療養者を看ているとそう願わずにはおれない。
(2021.5.17)

つつく・・・
※藤田さんの著書は台湾でも翻訳出版(写真左)されています。

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