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ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL " 理解なき支援が「溝」を生む" Vol.02_その1

その他投稿日時-(2017-08-27)ナースの星編集部

     食支援 が 病院と在宅 をつなぐ

摂食嚥下機能の低下があり、窒息、誤嚥、誤嚥性肺炎につながる可能性がある場合、病院側はQOLを向上させるため、リスクを回避して静脈栄養や胃瘻などの経管栄養を患者に勧めることが多い。
一方、在宅医療の現場では、リスク回避よりも患者の想いが重要なファクターになることがある。
在宅患者と家族、支える在宅医療チーム。双方を取材する中で、「食支援の重要性」と「食べたい患者」の存在を通して、急性期病院と患者との間にある「溝」が浮き彫りになった。
溝を埋めるものは、いったい何なのか。口から食べることにこだわり続ける患者とその家族、食支援に取り組む在宅医療チームの中に、その糸口を見つける。

在宅で遭遇した疑問「本当に食べられないのか?」
― 口から食べる機能を守りたい ―

「胃瘻から栄養を摂っている患者さんの中には、『食べたい想いを持っているのに、食べてはいけない』と言われている患者がいる。
『本当に、口から食べることができないのか?』と疑問を抱くことがあります」。
そう語るのは、わたなべクリニック(大阪府吹田市)理事長・院長の渡辺克哉先生。

「僕自身、急性期医療に携わっていたときは“食支援”という言葉すら知らなかった。食に重きを置いた医療というのは、考えたことも出会ったこともありませんでした」。
そう勤務医時代を振り返る渡辺先生は、在宅医になったばかりの頃、提携していた歯科医(摂食嚥下領域の専門家)と出会って、初めて嚥下内視鏡を教えてもらったという。

「―衝撃的でした。食べられる機能を持っていました。そのことをきっかけに、もしかすると、“禁食″がわずかに残る、食べる機能まで衰えさせるかもしれないと思うようになりました。
頭をよぎった疑問と嚥下機能検査が、私のターニングポイントになりました。
食支援の必要性を痛感した瞬間でした」。

胃瘻はその適応が正しければ、確実な栄養投与のための良いルートであることは、医療者として十分に理解している。一方で、食べたい気持ちに応えたい、適切な栄養管理・介入をしたい、口から食べる機能を守りたい、という想いが渡辺先生を食支援に向かわせた

『死んでもいいから食べたい!』
鰻の皮で窒息した患者

ある時、渡辺先生が定期巡回で訪問していた患者が、鰻の皮で喉を詰まらせ救急搬送された。

嚥下機能評価では経口摂取は危険と評価されており、胃瘻をつけていたが、患者自身は「元気になるためには食べなくては! 死んでもいいから食べたい!」と経口摂取をあきらめなかった。
患者の家族は搬送先の救急の医師から「もう食べさせないでほしい。食べるから詰まらせるのだ」と叱責されたという。

渡辺先生は直談判に出向く。
「急性期病院の医師の立場や想いもわかる。しかし、食事が生きる気力となっている人に『二度と食べるな』と言えるだろうか。
『在宅医療チームが慎重に対応し、これからもどうにか食べさせてあげたい。また救急搬送されるかもしれませんが、どうか宜しくお願いします』と説得して帰ってきました」。

食べたい患者の「希望」に寄り添う

同クリニックの言語聴覚士(ST)・玉元良一先生に相談し、訪問指導に加わってもらう。「詰まらせた時の喉内部の写真を見て、皮が張り付かなければなんとかなるのでは、と考えました」。

“誤嚥するのは仕方ない状況である”ことを前提に、できるだけ貼り付かないような食形態を管理栄養士に相談する。
患者の口の中や嚥下機能を確認しつつ、その状態に合う嚥下食をオーダーメイドで用意したそうだ。

「訓練として、食べる様子を見ていると、とても喜んで食べ、ムセはしても、詰まらせたことはありませんでした」と玉元先生は言う。
患者からは『焼き鳥がいい』、『ステーキが食べたい』、『おでんは大丈夫か』と訪問の度に嬉々として次々にリクエストされたという。
この食支援が、患者の生きる気力になっていたのだろう。

「誤嚥や窒息リスクのある患者に口から食べさせるのは、正直言って怖いですよ。怖いけれど、それが患者の希望だったら、在宅医療チームの全員が腹をくくろう、最終的な責任は在宅医である私がとるから、できるだけその希望に添っていこうと思っています」。
そう言って渡辺先生は、豪快に笑う。

その他・透析ケア・透析ケアナースの星編集部

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